定常的な広域地殻活動


定常的な広域地殻活動を理解するためには,島弧−海溝系規模の空間的スケールと地震の繰り返し周期オーダーの時間的スケールで,場の不均質,その中での地殻活動のメカニズムと地震発生の特徴を明らかにすることが重要です.これらにより,プレート運動に伴う,沈み込み帯での応力再配分・蓄積過程に関する新しい知見を得ることを目指します.

(1)プレート境界域の地殻活動及び構造不均質に関する研究

 太平洋プレート境界の構造及びプレート間カップリングに関する観測研究を実施する.三陸沖の海底地震観測によるプレート境界の不均質構造の解明を目指すとともに,陸域においては,GPSや広帯域地震計を用いた高精度観測を実施し,プレート境界部の構造とカップリングの空間的変化の解明を目指す.「地震準備過程」における観測研究と密接な連携を図ることで,太平洋プレート沈み込みに伴うプレート間カップリングの空間的・時間的変化に関する新しい知見を得る.

(2)プレート内部の地殻活動・構造不均質に関する研究

 プレート内(島弧内)の構造的不均質を解明し,地震活動・地殻変動等の地殻活動との関連性を明らかにする目的で,日高衝突帯を中心とする地域で大規模合同実験観測を行う(8月に実施済み).屈折法,反射法及び自然地震観測を互に密接な連携のもとに実施し,島弧−島弧衝突帯の構造不均質を解明し,そこでの地震活動,応力状態を明らかにする.この実験観測と平行して,北海道を含む数カ所において電磁気的探査を実施する.

(3)地震発生の繰り返しの規則性と複雑性の解明

 地震発生の繰り返しの実態解明は,地震発生の場での定常的運動及びその揺らぎを明らかにする意味でも,また地震の発生時期の長期的予測を行う基礎という意味でも重要である.地震発生の繰り返しの間隔は数百年から数千年に及ぶ場合が多く,地質学的手法を取り入れた活断層調査,津波痕跡調査及び歴史地震調査を実施する.対象とした地震断層の物理的性質(震源の静的・動的パラメータ,破壊伝播様式,破壊強度分布等)の解明に貢献する.