(1)  課題番号0101

(2)実施機関名東京大学地震研究所

(3)建議の項目:  (1) 定常的な広域地殻活動

(4) 課題名:

三陸はるか沖地震域におけるプレート境界の形状・物性と震源過程の比較研究

(5)関連する建議の他の項目:          (1)ウ (2)ア、ウ・エ (3)イ

(6) 平成11年度の成果の概要 

・平成8年三陸沖東経143゜E、39゜〜40゜Nにおいて海底地震計・制御震源を用いた地震探査を行い、2次元速度構造を海溝に平行・直行方向で求めた.38゜45´N〜39゜にかけての沈み込みプレート境界から強い反射波が有ることを見つけた.この場所は1960年以降地震活動が低い場所であり、プレート境界に流体などの存在の可能性を示唆している.

・平成9年度は日本海秋田沖において海底地震計・制御震源を用いた地震探査を行った(図1)。同時に行われた内陸のデータと合わせ解析した結果、日本海から内陸にかけての精密な地殻構造が得られた。これから、海域のマントルは8.0km/sを持つが、内陸では地殻は厚くなるとともに地震波速度も7.7km/sとなる(図2図3).

・平成10年度は30。5゜N—31。5゜N伊豆小笠原海溝陸側斜面において海底地震計・制御震源を用いた地震探査を行った(図4)。結果は現在解析中であるが、沈み込み境界面にある蛇紋岩海山での強い減衰と、プレート境界からと思われる大震幅の相がある。これはプレート境界に沿っての岩水鉱物(蛇紋岩)の存在を示唆し、伊豆小笠原海溝での大地震の少ないことと調和的である。(図5図6

     三陸はるか沖地震の震源域をモデル地域としてプレート境界面付近の地震学的性質(反射強度と地震波速度)を求めることを目的とし、平成11年10月24日〜11月4日三陸はるか沖震源を含む三陸沖の39゜N〜41゜15´N,142゜30´Eにおいて海底地震計17台と制御震源(火薬40kg×80発、エアガン17x2)を用いた地震探査を行った。現在データのフォーマット変換、距離の計算など必要な処理の途中であり、試験的表示まで来たところである.確定的な結果をまだ得ていない。測線図、及び中央部のペーストアップ を図に示す。

(7)平成11年度の成果に関連の深いもので、平成11年度に公表された成果

西坂弘正、篠原雅尚、日野亮太、笠原順三、他、海底地震計と制御震源を用いた秋田沖日本海東縁部海陸境界域のP波速度構造その2,1999年地惑科学関連合同学会、1999.

藤江剛、笠原順三、佐藤利典、他、海底地震計と人工地震を用いた三陸沖のプレート収束域の地震波速度構造、2,1999年地惑関連合同学会、1999.

西野実、日野亮太、他、福島沖のプレート境界域の地震波速度構造、2,1999年地惑関連合同学会、1999.

上村彩、笠原順三、篠原雅尚、日野亮太、他、伊豆・小笠原海溝陸側斜面における地殻構造探査(序報)、2,1999年地惑関連合同学会、1999.

笠原順三、柿下毅、他、海底地震計による神津島〜銭州周辺の地震活動調査、2,1999年地惑関連合同学会、1999.

西坂弘正、篠原雅尚、日野亮太、笠原順三、佐藤利典、望月公広、末広潔、海底地震計と制御震源を用いた秋田沖日本海東縁部海陸境界域のP波速度構造、月刊地球/号外27,75-82,1999.

藤江剛、東京大学博士論文、2000.

西坂弘正、千葉大学博士論文、2000.

(8) 平成11年度に達成された成果の、全体計画の中での位置づけ

プレート間地震の発生過程を支配するものの1つとして,プレート境界の形状と物性がある.これらは,すべり面の摩擦法則を決める重要な要素であり,震源過程をコントロールしているものと思われる.本研究では,震源過程が詳しく求まっている三陸はるか沖地震域においてプレート境界の形状と物性の関連を調べるための観測を行い,また震源過程と比べることによって,形状・物性と震源過程の関係を明らかにすることを最終の目標とする.

  平成11年度は三陸はるか沖地震の本震・余震域西端を南北に縦断する測線で行った。平成12年度以降、毎年一回、東西測線、東側測線で実施、5年ではるか沖地震の震源域周辺をモデルとしたプレート境界のカップリング・物性に視点をおいた3次元的イメジングを行う。

(9) この課題の実施担当連絡者

氏名:笠原順三

電話:03-5841-5713

FAX :03-5689-7234

E-mail:kasa2@eri.u-tokyo.ac.jp

 

図の説明

 

図1:日本海の調査測線

図2:大和海盆から佐渡海嶺に至る地殻構造

図3:マントルに至るP波速度構造

図4:伊豆小笠原地震探査測線

図5:東西測線の西端(OBS#1)のペーストアップ。初動が減衰している場所(110-120km)はサーペンテイン海山の位置。70−100kmはプレート境界からの反射波と思われる。

図6:南北測線の北端(OBS#14)のペーストアップ。

図7:三陸沖の測線と海底地震計の配置。南から北へ#1〜#17。

図8:#2のペーストアップ記録。距離は南から北へ向かう。位置は39゜10´付近。

図9:#10のペーストアップ記録。地震計は北緯40゜20´付近。