(2)実施機関名:東京大学地震研究所、高知大学理学部、北海道大学理学部、
北海道大学地球環境科学科
(3)建議の項目:1.(1)
(4)課題名:浜名湖底、北海道海岸の堆積物中の津波痕跡調査
(5)関連する建議の他の項目
(6)平成11年度の成果の概要
(a) 浜名湖底の津波堆積物調査
目的: 浜名湖は静岡県東部の太平洋海岸線上に位置する潟湖であって、東海沖で海溝型巨大地震が起きるたびごとに地盤沈下を繰り返し、また外洋から湖内への津波の侵入が繰り返されてきた。浜名湖は1498年明応東海地震のときまで湖口は閉じていて淡水湖であったが、この地震の津波によって湖口が海に開かれ塩水湖となったと記録されている。江戸時代には、宝永4年(1707)、安政元年(1854)の各年に東海地震の津波に襲われ、湖奥部まで津波が及んだと伝えられている。以上のように文書記録が伝える津波を湖底堆積層の津波痕跡を調べることによって物的に検証し、さらに歴史時代以前の東海地震による津波痕跡を発掘することを目的としている。平成10年までの成果: 平成10年には、湖口に近い深さ2m以浅の湖域で、長さ1m〜1.5mの6本のコアサンプルを収集した。そのなかに、1498年の津波痕跡に加えて平安時代の永長元年(1096)東海地震の津波痕跡を検出した。さらに古文献に対応しない13世紀ころの津波痕跡が見つかった。また、3420y.BP、3850y.BPの年代を示す2個の津波痕跡が検証された。平成11年の成果:平成11年には、北半分の深さ10m〜13mの深い湖域での湖底堆積物の調査を行った。湖の北側深部を南北に横断する2線を設定し、超音波探査を行った。また、8本のピストンコアを採取し、各コアにおのおの数本ずつの津波堆積物層を検出した。
反射画面には北側の湖域全体に湖底下約1mのところに津波堆積物の痕跡を示す明瞭な筋が見られた(図)。この層のC14年代測定により、これが1498年の明応地震の津波堆積物であることが検証された。2000年2月現在この上下の津波痕跡の分析を行っている。
(b) 北海道海岸の堆積物中の津波痕跡調査
北海道十勝平野〜豊頃の海岸線の比高5〜30mの崖上には、過去に北海道南部海域に発生した海溝型巨大地震による津波による堆積物が載っている。ここで合計5枚の津波堆積物が認められた。最上の層は、慶長三陸津波(1611年)のものと推定され、第2,第3枚目はおのおの12〜3世紀頃、および7〜8世紀頃のものと推定された。これら結果から、崖上堆積物を形成した大きな津波の発生間隔はほぼ500年であることが判明した。1611年以後の津波堆積層は見いだされず、1611年の慶長三陸津波は、明治三陸津波(1986)をさらに上回る規模のものであったとみられる。
(7) 発表文献、学会発表
都司嘉宣ら、1999,浜名湖の湖底堆積物のコアサンプル中に見いだされた津波痕跡,地学雑誌、108,4,口絵3
都司嘉宣,岡村 眞,松岡裕美、村上嘉謙、1999,浜名湖の湖底堆積物中の津波痕跡調査、歴史地震、14,101-114
都司嘉宣,岡村 眞,松岡裕美、村上嘉謙、浜名湖の湖底堆積物中の津波痕跡調査、地震学会1999年春季大会
平川一臣、中村有吾、1999,北海道十勝沿岸地域の巨大津波と再来周期、地震学会1999年秋、C78.
(8) 全体計画の中の位置づけ
歴史時代をさかのぼる先史時代の東海地震の存在、およびその発生間隔が徐々に解明されつつある。また、歴史史料の乏しい北海道東部の巨大地震の履歴が解明されつつある。
(9)実施担当連絡者
氏名:都司嘉宣
電話:03-5841-5724
Fax:03-5689-7265
E-mail:tsuji@eri.u-tokyo.ac.jp