(1) 課題番号:0107a
(2)実施機関名: 地震研究所
(3)建議の項目:
㈽-1-(2) 準備過程における地殻活動
(4) 課題名:繰り返し注水実験による野島断層の強度回復の検出および誘発地震発生メカ ニズムの解明
(5)関連する建議の他の項目:
㈽-1-(2)-イ,㈽-1-(2)-ウ、㈽-1-(2)-エ、㈽-3-(2)-ウ
(6) 平成11年度の成果の概要 (平成11年度の到達目標との関連を明記する。平成11年度以前の計画の成果で11年度と関連の深いものはこれに含める)
この課題は京都大学大学院理学研究科と共同で進めている。この野島断層解剖計画の一環として、2000年1月〜2月に1800m孔を用いた注水実験 が行なわれ、注水に対する断層破砕帯の地球物理学的な応答を調べるために800mボアホールに設置してある総合観測装置による観測を強化した。1800m孔の孔口は、800m孔の50m北北東に位置する。1800m孔へ注入された水は、地下深部に浸透するとともに、周囲の間隙水圧を上昇させ、地殻変動を引き起こすと考えられる。そのため、注水に伴なうひずみおよび傾斜変化を調べることによって、周辺媒質の透水性および弾性的性質に関する情報が得られるものと期待される。注水実験は、2000年1月11日,1月22日〜1月26日および1月31日〜2月5日の計3回実施された。このうち、1回目の注水実験は、1800m孔の地上部で漏水が生じたため、注水圧力を上げる初期段階で中断された。2回目および3回目の注水圧力は、それぞれ、約30気圧および約40気圧で保持された。注水が開始された直後、ひずみ3成分はすべて縮みを示した。2回目の注水実験における最大の縮みは北東−南西方向の約4.0E-8であり、3回目の注水実験における最大の縮みは東北東−西南西方向の約7.0E-8であった。1997年の注水実験では、約45気圧の注水によって、北東−南西方向に約5.0E-8の最大の縮みが生じた。注水に伴なうひずみ変化は数日の時定数をもち、注水圧力の上昇に比べて緩やかに進行した。この時定数は、注入された水が地下深部に拡散していく時間に相当しており、周辺媒質の透水性に関連していると考えられる。800m孔の湧水量は、注水開始後の
数日間で600cc/hourから620〜630cc/hourへ増大した。このことは、800m孔の周辺においても、注水に伴なって間隙水圧が上昇したことを示している。注水が終了したのち、ひずみ3成分はすべて伸張傾向に転じ、湧水量はほぼ注水前のレベルまで低下した。温度および傾斜変化には、注水の影響はみられなかった。1997年の注水実験に伴なう傾斜変化には、注水期間に南南東への約1.0E-7radianの沈降がみられたことから、1997年と2000年の注水実験では、注入された水の拡散領域が異なっていた可能性がある。今後、1997年に行なわれた注水実験の測定結果と合わせて、周辺媒質の透水性および弾性的性質などの地質学的な特徴について研究を進める。
(7)平成11年度の成果に関連の深いもので、平成11年度に公表された成果
向井厚志、藤森邦夫、石井 紘ほか、淡路島800m孔における歪および傾斜の気圧応答、1999年地球惑星 科学関連合同学合同大会 Dd-P01.
向井厚志、藤森邦夫、淡路島800m孔におけるひずみおよび傾斜変化に及ぼす降水の影響、1999年日本地 震学界講演 P160.
(8) 平成11年度に達成された成果の、全体計画の中での位置づけ
(9) この課題の実施担当連絡者
氏名:石井 紘
電話:03-5841-5745
FAX:03-3813-9426
E-mail:ishii@eri.u-tokyo.ac.jp