(1) 課題番号: 0108
(2) 実施機関名: 東京大学地震研究所
(3) 建議の項目: 1 (2) 準備過程における地殻活動
(4) 課題名: ケーブル式海底地震計による地殻活動の把握
(5) 関連する建議の他の項目: 1(1)ア・イ,1(2)ア,1(3)イ,2(2)イ
(6) 平成11年度の成果の概要
平成11年度に実施した主な項目は,ケーブル式海底地震計による伊豆東方沖および三陸沖の地殻活動のモニタリングの継続と、三陸沖ケーブル先端部近傍における広帯域型海底地震計による観測,九州西方沖の地震活動の調査、三陸沖海域の地殻構造調査(課題010と共同)、海・陸合同による伊豆大島山体構造の調査等を実施したほか,長期観測型c広帯域型の海底地震計による観測をおこなった。
三陸沖における光ケーブルを用いた海底地震・津波観測システムは、陸域の地震観測網と連携して海・陸一体化した観測研究を推進するために敷設され,平成8年10月から運用を開始した.岩手県釜石市八木浜にケーブル陸揚局を置き、そこからほぼ東120kmの沖合い海底(水深2705m)までケーブルが敷設している。沖合い51km(水深1057m),93km(水深1840m),115km(水深2480m)の3地点に高精度加速度型地震計(JA5-TYPEIII,ジンバル機構無し)を設置し、沖合い46km(水深1013m)と74km(水深1618m)の2地点に水晶圧力センサーによる高精度津波計(水柱換算1mmの分解能)を設置している.観測データは、東北大学理学部地震・噴火予知研究観測センターには専用回線でリアルタイム伝送し,地震研究所には衛星通信を利用して伝送することによって、伝送路を二重化している.平成10年度は、ケーブル先端部付近で発生したM6.3(1998年5月31日)の地震について、ケーブルシステムのデータを活用して余震活動の時間変化,余震分布と本震メカニズム,微小津波等の詳細を明らかにしたが、平成11年度はこのクラスの地震が近傍で発生していないこともあって、地震の高精度震源決定にデータを活用してプレート沈み込みに関連する地殻活動の把握をすすめた。
ケーブル式海底地震計によるリアルタイム観測と連携して地殻活動の詳細を明らかにするために長期観測型および広帯域型海底地震計の開発をすすめてきたが、平成11年度は三陸沖ほかで観測に使用し良好な記録を取得した。
(7) 平成11年度の成果に関連の深いもので、平成11年度に公表された成果
塩原肇、望月将志、渡邊智毅、酒井慎一、金沢敏彦、日野亮太、「相模湾での広帯域海底地震計の試験観測」、地球惑星科学関連学会1999年合同大会CD-ROM講演予稿集、講演番号 De-P004.
西野実、日野亮太、末広潔、金沢敏彦、笠原順三、佐藤利典、篠原雅尚、「福島沖プレート境界域の地震波速度構造」、地球惑星科学関連学会1999年合同大会CD-ROM講演予稿集、講演番号 Sk-P023.
望月将志、金沢敏彦、「長期観測に向けた海底地震計の開発」地球惑星科学関連学会1999年合同大会CD-ROM講演予稿集、講演番号 De-P003.
金沢敏彦、望月将志、渡邊智毅、塩原肇、村上英幸、稲谷栄紀、「長期観測および広帯域観測をめざした自己浮上型海底地震計の開発」、地球惑星科学関連学会1999年合同大会CD-ROM講演予稿集、講演番号 Sa-009.
塩原肇、望月将志、金沢敏彦、尾鼻浩一郎、片尾浩、柿下毅、斉藤直、「1998年5月4日石垣島南東沖地震のOBS余震観測」、地球惑星科学関連学会1999年合同大会CD-ROM講演予稿集、講演番号
Sm-P014.
杉岡祐子、深尾良夫、金沢敏彦、神定健二、「海底地震計でとらえた海底火山活動」、地球惑星科学関連学会1999年合同大会CD-ROM講演予稿集、講演番号 De-P010.
(8) 平成11年度に達成された成果の、全体計画の中での位置づけ
長期観測型/広帯域型海底地震計の開発によって、ケーブル式海底地震計を核として三陸沖の地殻活動の把握を広域的にすすめる技術的な基盤ができた。今後、長期観測型/広帯域型海底地震計の数をふやしていくことが必要である。
(9) この課題の実施担当連絡者
氏名:金沢敏彦
電話:03-5841-5780
FAX:03-5841-8265
E-mail:kanazawa@eri.u-tokyo.ac.jp