(1)課題番号:0111

(2)実施機関名:東京大学地震研究所

(3)建議の項目:地震時及び地震直後の震源過程と強震動

(4) 課題名:断層面上の不均一応力変化と強度分布の把握

(5)関連する建議の他の項目:

(6) 平成11年度の成果の概要:

●強震計ネットワークの整備・充実

 補正予算による『大都市圏総合強震計ネットワークシステム』の整備計画と結びつけて、首都圏における自治体等の既存強震計ネットから波形データを収集し、利用者に提供するシステムを構築した(図1)。これにより、オンライン、オフラインを含め、約500点の強震計データが収集されることになる。さらに、高ダイナミックレンジの微小地震計ネットの記録と結びつけ、日本列

島規模での波動伝播を調べる試みを行った。

●詳細な震源過程の把握

 高ダイナミックレンジの地震計観測網のデータを使い、中規模程度の地震についても詳細な震源過程を調べることができるような方法とデータ利用環境を作成した。小地震の記録を経験的グリーン関数として、モーメント解放の時空分布を求めるものである(図2)。

 一方、遠地と近地の地震記録を同時に用いて震源過程の詳細を調べる方法を充実させ、国内外かつ新旧の大地震に適用した(図3図4)。

 さらに、得られた断層すべりの時空分布に対し、通常の摩擦すべり特性(応力降下と強度)と整合性のある動力学モデルを求めた(図5)。動力学モデルは断層面上でのアスペリティ・バリアの分布を明らかにし、より高い精度で震源域近傍での強震動の推定を可能にする。

 

(7)平成11年度の成果に関連の深いもので、平成11年度に公表された成果:

菊地正幸: "1999年8月17日トルコ北西部の地震(Ms 7.4) と9月21日

 台湾中部の地震(Ms 7.7) の震源過程解析速報"、東京大学地震研究所広報、

 No.27, 7-9, 1999.

M. Kikuchi, Y. Yamanaka, K. Abe, and Y. Morita: "Source rupture processes of the Papua New Guinea earthquake of July 17, 1998

 inferred from teleseismic body waves", Earth Planets and Space,1999.

Y. Yagi, M. Kikuchi, S. Yoshida, and T. Sagiya: "Comparison of the coseismic rupture with the aftershock distribution in the Hyuga-nada earthquakes of 1996",  Geophys. Res. Lett., 26,

 3161-3164, 1999.

菊地正幸・中村操・山田眞・伏見実・巽誉樹・吉川一光: "1948年福井地震の震源パラメーター--1倍強震計の解析"、地震、52, 121-128, 1999.

橋本徹夫・菊地正幸:"地震記録から見た1946年南海地震の震源過程"、月刊地球、号外No.24, 16-20, 1999.

 

(8) 平成11年度に達成された成果の、全体計画の中での位置づけ:

 詳細な破壊過程を調べるためには近地の強震計データが有用である。とくに震源域を含む観測網の充実は強震動の生成過程を理解する上でも重要である。11年度は主にこのような基盤整備とデータ解析用ソフトの改良を行った。

 

(9) この課題の実施担当連絡者

氏名:菊地正幸

電話:03-5841-5764

FAX:03-5841-8263

E-mail:kikuchi@eri.u-tokyo.ac.jp