(1)課題番号:No.0201
(2)実施機関名:京都大学防災研究所
(3)建議の項目:準備過程における地殻活動
(4) 課題名:広域長期にわたる地殻活動の量的評価
(5)関連する建議の他の項目:
1.(2).イ、ウ
2.(1).イ
(6) 平成11年度の成果の概要
地震活動度を定量的に表現することは地震研究の基礎として不可欠である。地震活動度を扱うパラメータとして、(1)地震数、(2)破壊面積に比例す(Tuskuda;1985)、(3)地震エネルギーの3種をとる。それらを単位面積当たりの密度(夫々Nd,Ad,Ed)として表現する。それを活断層からの距離の関数として示し、断層から離れて通常の活動レベルに落ち着く距離までを活断層の影響範囲と既定する。結果は下記の2項目に大別できる。距離に依存する減衰を示さない場合は、その変化パターンを区分し、地域特性の検討を加える。
(イ)西南日本の内陸活断層に関わる地震活動度の量的評価
京大防災研の過去25年間の微小地震観測結果(THANKSデータ)を用いて、西南日本の内陸活断層周辺の地震活動度を評価した。西南日本の活断層は横ずれ型が主である。断層面は鉛直であると仮定して上記の解析を実施した結果、約5kmまでが断層の影響範囲であることがわかった。地震活動が相対的に活発な断層は、六甲・淡路、有馬・高槻、花折、山崎などであった。上記の3種のパラメータ相互間ではほぼ同様の結果を得た。(図1)
(ロ)全国の98活断層(推本の調査断層)の場合
気象庁震源を用いて解析した。逆断層の断層面の傾斜角は水平から40度、60度の場合を仮定し上盤側に地震が多いとして解析を行った。その結果、相対的な地震活動度に関して、関東以北の活断層は中部以西の活断層より関連する地震活動度が低いことが伺われた。太平洋プレートの潜り込みの影響は内陸地震としてはあまり解消されていないのではなかろうか。(図2)
平成11年度に当研究は予算化されなかったが活断層に関する解析の初期の目標は達成できたと考える。今後データベースの整備と流通をはかり、解析制度を高める。また活断層が見とめられていない領域における活動度の評価から、地殻構造の不均質及び応力蓄積過程の解析を実施したい。
(7)平成11年度の成果に関連の深いもので、平成11年度に公表された成果
・今田幸史、渡辺邦彦;
GISを用いた西南日本における地震活動の空間的特性、1999年地球惑星科学関連
合同大会、Sm-013、1999.
・Nishida,R., J.Ozaki, M.Azai, K.Watanabe and Y.Imada:
QUANTITATIVE
REPRESENTATION AND EVALUATION OF SEISMIC ACTIVITY AROUND ACTIVE FAULTS, IUGG99, 21st. July 1999.
・今田幸史、渡辺邦彦、西田良平;
活断層周辺での地震活動度の定量的評価について、日本地震学会1999年度秋季大会、B01、1999.
・Yukihito Imada;
Quantitative
Evaluation of Seismic Activity Related to Active Faults, Master Thesis,
Division of Earth and Planetary Science, Kyoto University, 2000.
(8) 平成11年度に達成された成果の、全体計画の中での位置づけ
全体計画は、地震活動度を量的に評価して地震発生の時間的空間的特性を把握し、特徴的な領域において稠密総合観測を実施することと併せて、地震発生に至る準備過程の解明に資することである。
平成11年度は特徴的な内陸不均質構造として活断層を取り上げ、それが地震発生に及ぼす影響を解析した。今後、地震活動度の時間変化に着目して応力蓄積過程の解明に努めると共に、中規模地震の解析を大地震に敷衍することで地震発生機構の解明を行いたい。
(9) この課題の実施担当連絡者
氏名:渡辺邦彦
電話:(0774)38-4204
FAX:(0774)38-4204
E-mail:watkun@rcep.dpri.kyoto-u.ac.jp
「図の説明」
図1:西南日本の11本の内陸活断層周辺の地震活動度評価の結果。微小地震震源を用い地震数、破壊面積、エネルギーの3種の面積密度を夫々、断層の色、四角の面積、円の面積で同時に表現した。特に、花折、有馬・高槻、六甲・淡路(兵庫県南部地震の余震活動の影響)、山崎の活動が活発である。
図2:全国の98活断層にかかわる地震活動度を破壊面積の密度で評価したもの。逆断層面の傾斜角を40度と仮定した場合。関東以北は千屋断層系を除いて活動度が低いが中部以西は概して活動度が高い。プレート運動による応力が地震活動で解消されるメカニズムが上記の地域で異なることを示唆していると考えられる。