(1)課題番号:0305
(2)実施機関名:北海道大学理学研究科
(3)建議の項目:定常的な広域地殻活動
(4) 課題名:北海道南方沖における海底地震観測
(5)関連する建議の他の項目:(1)ア・ウ、(2)イ・ウ・エ
(6) 平成11年度の成果の概要
図1に示す北海道南方沖の海域において、海底地震計による約2か月間の自然地震観測を行った。この海域は、千島島弧が西進し東北日本弧と衝突していると考えられている日高山脈の海側への延長部にあたり、また太平洋プレートが沈み込んでおり、テクトニックに複雑な場所である。この海域のテクトニクスを明らかにすることは地球進化をより深く理解するためだけではなく、地震発生ポテンシャルの評価という点からも重要である。実際、海溝付近では1952年十勝沖地震(M8.2)などM8クラスの地震が、浦河沖のマントルウェッジでは1982年浦河沖地震(M7.1)などM7クラスの大地震が発生している。
衝突帯のテクトニクスを理解し大地震の発生ポテンシャルを評価するために、北海道日高山脈地域において平成11年度から海陸合同の地震観測が始まり、本研究はその一環として行われた。海域での観測データは陸域でのデータと併せて解析することにより、震源決定精度とトモグラフィーの分解能向上および探査範囲の拡大を可能にする。またプレート境界トラップ波を検出し、プレート上面の詳細な速度構造を推定するという別の目的もある。沈み込む海洋プレート上面はプレート境界大地震が繰り返し発生する場所で、その構造を詳しく調べることは大地震発生の場を理解する上で極めて重要である。このトラップ波検出のために海溝を横断するように地震計を配置した(No.121-127)。
No.110-120の11台は平成11年6月28-30日に気象庁函館海洋気象台「高風丸」によって、残り16台は北海道大学理学研究科の傭船で8月4-6日にそれぞれ設置された。その内図1中に番号の振ってある21台の海底地震計が、北海道大学理学研究科の傭船で10月4-12日に回収され、解析可能な地震データを取得することができた。記録期間は7台のデジタル型地震計(No.101、104、116、122-127)では8月7日から約2か月間、14台のアナログ型地震計(No.102、105、110-121)では8月15日から約4週間で、現在まだ地震イベントを検出中ではあるが、デジタル型地震計では期間中約500個の地震が観測されている。
一例として、8月23日に浦河沖で発生したM4.8の地震の、No.123、126、127の海底地震計で観測された上下動成分の波形を図2に示す。横軸は発震時からの経過時間である。No.123は海溝軸より陸側、No.126と127は沈み込む太平洋プレート上にそれぞれ位置する。No.123では、不均質性の強いマントルウェッジを地震波が伝播して来るため、No.126と127に比べ直達S波の立ち上がりが不明瞭でコーダ波が長時間励起されていることがわかる。また、太平洋プレート上のNo.126と127では、直達波の後に沈み込む太平洋プレート上面の低速度層にトラップされたと考えられる後続波(XpおよびXs)が見られる。
平成11年度には、以上のようなデータの取得が達成された。
図の説明
図1.観測点分布図
図2.1999年8月23日に浦河沖で発生した地震(M4.8)の、No.123、126、127の海底地震計で観測された上下動成分の波形
(7)平成11年度の成果に関連の深いもので、平成11年度に公表された成果(出版された論文、学会大会等での発表、会議報告等を科研費の申請書に倣って書く「著者名、論文名、学協会誌名、巻(号)、最初と最後のページ、発表年(西暦)、著者名が多数にわたる場合は、主な著者を数名記入し以下を省略」)
なし。
(8) 平成11年度に達成された成果の、全体計画の中での位置づけ
平成11年度はデータの取得が達成された。平成12年度にはさらにデータを蓄積し、震源決定やトモグラフィーに加え、沈み込み帯の構造の解析も進める予定である。
(9) この課題の実施担当連絡者
氏名:村井芳夫
電話:011-706-3553
FAX:011-726-7240または011-746-7404
E-mail:murai@eos.hokudai.ac.jp