(1)課題番号:0501.3

(2)実施機関名:東北大学大学院理学研究科

(3)建議の項目:

1. 地震発生に至る地殻活動解明のための観測研究の推進

(1)  定常的な広域地殻活動

(4) 課題名:

  高速サンプリングGPS観測によるカップリングのゆらぎの検出

(5)関連する建議の他の項目:

  1. (1) ア・イ、(2) ア・イ

(6) 平成11年度の成果の概要

測地学研究のためのGPS観測においては,通常サンプリング間隔が30秒ないし1分でデータを収集する.本研究課題では,このサンプリング間隔を1秒あるいはそれ以下まで高速化し,時間分解能の高いGPSデータを解析することにより,地震帯域と測地帯域の中間的な継続時間をもつ変動現象をとらえることを目標としている.

 

平成11年度の到達目標は高速サンプリングGPS観測を開始し,データ解析手法について研究することであったが,本年度の重点は特に前者におかれた.高速サンプリングGP S観測を実現するための方策は以下のとおりである.

 

  1)      A社の測地用GPS受信機では,1衛星1エポック(サンプリング)分のデータは約100byteである.現在日本周辺で観測可能な衛星数は最大10個であるから,1Hzの観測を行って遠隔地の解析センターに伝送するためには,約10kbpsの伝送速度が必要となる.これは,従来のアナログ専用回線1回線分の伝送速度に相当する.このような伝送媒体が確保できる場合にはこれを利用する.

 

  2)      上記のような条件が満たされない場合のために,必要なときだけ高速サンプリングデータが取得できるようなシステムを考案した.図1に示すように観測点には,GPSアンテナおよび受信機とそれにシリアルポート経由で接続されたデータ収集用のPCを設置する.PCのOSには長期安定性を考慮してLinuxを採用した.PCでは1Hzで受信機からリアルタイムで出力される観測データを1日ごとにファイル化する(以下RAWファイル).毎日00時00分00秒(UT)になった時点でRAWファイルは一つ前のエポックでクローズし,米国GPS大学連合によるソフトウエアTEQCを用いてRINEXに変換する(以下HR-RINEX).同時に,TEQCによりHR-RINEXをリサンプルして,30秒あるいは1分サンプリングのR INEXファイル(LR-RINEX)を作成する.HR-, およびLR-RINEXとも,設定した期間PCに保存しておき,通常はLR-RINEXファイルを自動的に解析センターに伝送する.何

かイベントがあったときには,HR-RINEXを解析センターに伝送する.このような方法をとると,LR-RINEXのみを伝送するためには,1MB/日程度のデータ量ですむ.

 

  3)      2)の場合のデータ伝送は,アナログまたはディジタルの公衆回線網を利用したダイアルアップIP接続を採用することにより,実現可能でかつ通信コストが低く抑えられる.

 

(7) 平成11年度に公表された成果

なし

 

(8) 平成11年度に達成された成果の、全体計画の中での位置づけ

本年度の成果により効率的なデータ取得方法の目途がついたと考えられる.12年度以降は実際の観測点における運用とデータ解析に重点を移したい.

 

(9) この課題の実施担当連絡者

氏名:三浦哲         

電話:022-225-1950     

FAX:022-264-3292

e-mail: miura@aob.geophys.tohoku.ac.jp

 

図1 高速サンプリングGPS観測システムのブロック図.