(1)課題番号:0601
(2)実施機関名:秋田大学 工学資源学部
(3)建議の項目:(2) 準備過程における地殻活動
(4) 課題名:東北地域の活断層深部比抵抗構造の解明
(5)関連する建議の他の項目:(1)ウ、(2)ウ
(6) 平成11年度の成果の概要
秋田県千屋断層の深部比抵抗構造を明らかにすることを目的に広帯域MT共同観測を実施した.観測点は秋田県本荘市から岩手県花巻市まで,脊梁山地を横切るように35点設置した(図1).測線長は約90kmで,この測線を3回(延べ31日間)にわたって観測した.観測値に含まれるノイズを低減させる処理を行い,二次元逆解析を行った.得られた比抵抗構造断面を図2に示す.震源分布,断層の位置も同時に示した.なお,解析はTMモードのみを用い,海の影響は考慮していない.解析の結果,東側の測点015から231にかけて西下方向に延びる低比抵抗領域は,㈰北上低地西縁断層帯に対応し,比抵抗コントラストから深さ5〜6kmまでこの断層が及んでいることがわかる.測点001付近から東下に延びる低比抵抗領域は横手盆地東縁断層帯に属する㈪千屋断層に対応する.千屋断層は深さは7〜8kmに達している.測点400付近には㈬滝ノ沢断層をはじめとする,小規模な断層が多数存在している.測点340付近の低比抵抗領域付近の構造は,㈭鳥田目断層群に対応し,深さは6〜7kmまである.測点310付近の低比抵抗領域は㈮北由利衝上断層群に対応する.この断層群の深さは4〜5kmである.逆断層の傾向は比抵抗構造から明らかである.比抵抗構造の特徴を以下まとめる.
1. 断層は低比抵抗領域としてとらえることができる.
2. 千屋断層の破砕帯は深さ7〜8kmまで続いている.
3. 上部地殻では千屋断層を境に比抵抗構造が東西で大きく異なり,西側では低比抵抗,
東側では高比抵抗を示す傾向がある.
4. 下部地殻は上部地殻に比べてある程度均質な比抵抗構造を有する.
5. 上部地殻で起こる地震の震源は,断層の破砕帯である低比抵抗領域の延長上に多く,
低比抵抗領域と高比抵抗領域の境界付近に集中していると言える.
(図1の説明)
広帯域MT観測の観測地域と測点配置図
(図2の説明)
二次元比抵抗構造断面図.左側が西,右側が東である.震源分布も同時に示した.
(7) 高橋幸恵,西谷忠師,MT法を用いた千屋断層深部比抵抗構造,CA研究会で発表,2000年2月.
(8) 平成11年度に達成された成果の、全体計画の中での位置づけ
秋田県千屋断層で行われた電磁気集中観測は一段落とし,平成11年度はそのまとめの段階である.解析により現実に近い構造モデルを得ることができた.
(9) この課題の実施担当連絡者
氏名:西谷忠師
電話:018-889-2381
FAX:018-837-0402
E-mail:nisitani@ipc.akita-u.ac.jp