(1)課題番号:0905
(2)実施機関名:名古屋大学大学院理学研究科
(3)建議の項目:観測技術
(4) 課題名:「精密制御震源(アクロス)の実用化と地下の常時モニター手法の確立」
(5)関連する建議の他の項目:1-(2)-ウ、1-(3)-ウ、3-(2)-ウ
(6) 平成11年度の成果の概要 (平成11年度の到達目標との関連を明記する。平成11年度以前の計画の成果で11年度と関連の深いものはこれに含める)
平成11年度の到達目標は,「走時の時間安定性を100マイクロ秒以下にすること」であった。この目標は達成された.
1.野島断層におけるACROSSの連続運転において走時の時間安定性を追求した.第一ステップとして深いボアホール(1800m)と浅いボアホール(800m)の地震計記録を比較することをおこなった.その結果24時間の移動平均記録において100マイクロ秒を切る走時分解能が達成された(図905-1).震源装置直下に設置した地震計を基準にするのは今後の課題であるが,それにより日周変動も押さえられると考えられる.
2.陸域地下構造フロンティアプロジェクトと共同して長時間の連続運転を行い,さまざまな基礎実験を行った.長距離到達実験も行ったが,100kmはなれた上宝観測点でも6日間のスタッキングにより25Hz,10トンでの送信信号が確認された.
3.瑞浪へのアレイ地震計の設置は諸般の事情により実現できなかった.
4.陸域地下構造フロンティアプロジェクトと共同して,移動式震源の性能試験を行っている.今年度は操作性を向上させるための改造を行った.また小型受信機録装置のソフトの最終的な改良を行った.このソフトは白山工業のLS8000SH上で稼働する.
5.また各務原の全方位型震源装置では,発生力の自由度の大きさを利用してACROSS震源の震源関数を求める実験を行った.これは震源と地面との動的相互作用によって震源の動きがどのように変わるかを知るためのものである.同時に,遠地の地震計との間の伝達関数を得るための基礎実験にもなる.
○図905-1の説明:この図は約1ヶ月の連続観測によりP波の走時変動を調べたものである.25Hzから35HzまでFM変調により0.1Hz刻みで同時に多成分の周波数を送信したものである.走時は逆フーリエ変換により得て,深さ800mの地震計を基準とした走時変動である.
(7)平成11年度の成果に関連の深いもので、平成11年度に公表された成果
(出版された論文、学会大会等での発表、会議報告等を科研費の申請書に倣って書く「著者名、論文名、学協会誌名、巻(号)、最初と最後のページ、発表年(西暦)、著者名が多数にわたる場合は、主な著者を数名記入し以下を省略」)
[1] 山岡・國友ほか5名:精密制御定常信号システムによる地震波速度モニター実験.物理探査学会第101回学術講演論文集.75−78,1999.
[2] 國友・山岡ほか5名:精密制御定常信号システムにおけるFM送信技術とその有効性.物理探査学会第101回学術講演論文集.79−83,1999.
[3] 山岡・國友ほか5名:ACROSSによる地震波速度モニター実験−10マイクロ秒の走時分解能をめざして−,日本地震学会講演予稿集1999年秋季大会.C66,1999.
[4] 生田・山岡ほか3名:FM多重送信を利用したACROSSによる定常地下モニター,日本地震学会講演予稿集1999年秋季大会.P176,1999.
[5] 國友・熊澤・山岡:ACROSSにおける周波数変調の有効性と送信装置を考慮した変調波形の最適化.日本地震学会講演予稿集1999年秋季大会.P177,1999.
[6] 森口・山岡ほか3名:新型ACROSS震源とその振動特性.日本地震学会講演予稿集1999年秋季大会.P178,1999
(8) 平成11年度に達成された成果の、全体計画の中での位置づけ
ACROSSの目標は,地下構造の時間変動をとらえるためのシステムを作ることである.そのためには震源の安定性,震源関数変動の正確な見積もり,観測点関数(サイト効果)変動の正しい見積もりが必要になってくる.これらの流れの中で,今年度は震源の安定性と震源関数変動の研究を行ったことになる.
(9) この課題の実施担当連絡者
氏名:山岡耕春
電話:052-789-3034
FAX:052-789-3047
E-mail:yamaoka@seis.nagoya-u.ac.jp