(1)課題番号:1004
(2)実施機関名:鳥取大学工学部
(3)建議の項目:1.(1)定常的な広域地殻活動
(4) 課題名:日本全国におけるネットワークMT観測
(5)関連する建議の他の項目:1.(2)エ,3.(1)イ,2.(2)イ,3.(2)ウ
(6) 平成11年度の成果の概要
平成11年度の到達目標は,「中国地方西部・四国地方西部においてネットワークMT観測網を設置する」ことである.これを受けて,中国地方西部および四国地方西部の未測定エリアにおいて,観測網を決定し,10月末から12月末にかけて,島根・広島エリアで測定を行い,12月末から山口・愛媛・広島エリアで測定を行った.また,この観測にあわせて広島県白木において地磁気3成分測定が開始された.これらの観測は,東京大学地震研究所・京都大学防災研究所・高知大学理学部・神戸大学理学部と共同して行われ,鳥取大学は主に,広島・島根・山口エリアの観測研究を分担した.
また,既存の中国地方東部の鳥取・郡家・美作ネット(図1)のTMモードのデータに対して南北方向の2次元比抵抗構造解析を行い,地殻・マントル最上部の比抵抗構造を推定した(図2).その2次元モデルの特徴は,以下の通りである.
(1)日本海沿岸部を除いて,地殻は全般的に高比抵抗(1kΩm以上)である.
(2)深さ約30kmから70kmまでの比抵抗値は200-500Ωmである.
(3) 一方,日本海側沿岸部では,深さ30km以深50kmまでに低比抵抗領域(数10Ωm)が存在し,地殻下部まで,南へ傾斜する形状で盛り上がっている.
(4)深さ70km以深から200kmまでの層は,高比抵抗(1kΩm以上)である.
(5)深さ200km以深(400km以深は1Ωm固定)の層は,約50Ωmの値を示す.
(7)平成11年度の成果に関連の深いもので、平成11年度に公表された成果
1. 塩崎一郎・西垣俊宏・大志万直人・村上英記・上嶋誠・山口覚他:ネットワークMT法から得られた中国地方東部の電気比抵抗構造(序報),鳥取大学工学部研究報告,第30巻,第1号,49-60,1999.
2. 塩崎一郎・西垣俊宏・山口高広・村上英記・大志万直人・山口覚他:中国地方におけるネットワークMT法観測,東京大学地震研究所彙報,第73号,第3/4冊,319-344,1999.
3. Yamaguchi S, Y. Kobayashi,N. Oshiman,K. Tanimoto,H. Murakami,I. Shiozaki他:
Preliminary Report on Regional Resistivity Variation Inferred from the Network
MT Investigation in the Shikoku District, Southwestern Japan, Earth Planets
Space, 51, 193-203, 1999.
(8) 平成11年度に達成された成果の、全体計画の中での位置づけ
平成11年度から平成15年度にかけての 全日本規模での観測計画では,ネットワークMT観測の未測定エリアに関する観測が行われる.中国・四国地方においても,中国地方西部・四国地方西部地域においてネットワークMT観測を行うことにより,ほぼ全域が網羅される.このような全体計画の中で,平成11年度は,中国地方西部・四国地方西部地域において,あらたなネットワークMT観測網を設置し,観測データを得ることを主な目的とした.
また,一断面ではあるが,中国地方東部の地殻・マントル最上部の大局的な比抵抗構造を推定した.次年度以降,上記研究報告で指摘した問題点をふまえ,同様の構造解析を面的に行うことで,火山や地震活動との対比が可能になるとともに,フィリピン海プレートの先端の形状を明らかにすることができるものと期待される.
(9)この課題の実施担当連絡者
氏名:塩崎 一郎
電話:0857-31-5642
FAX:0857-31-5635,
e-mail:shiozaki@cv.tottori-u.ac.jp
図1 中国地方東部のネットワークMT観測網.
黒丸はNTTの主幹局を示し,白丸は交換局を示す.これらの間を結ぶ実線は,測定を行った組合せを示す.また,図5で示される2次元構造解析の南北測線と要素番号(1-5)および周期64秒のインピーダンスの主軸方向を示す.
図2ネットワークMT観測から得られた中国地方東部の2次元比抵抗構造.
日本海沿岸部のモホ面下のマントル上部から地殻下部にかけて低比抵抗領域の盛り上がりが特徴的である.また,深さ70km以深に高比抵抗層が存在する