(4) 課題名:地殻内流体の挙動とその地震発生に対する力学的効果に関する研究
(5) 関連する「建議」の項目:(1)ア
(6) 平成12年度の成果の概要:
本年度は,余震の発生に流体がどのような影響を及ぼしうるのかということを数値シミュレーションにより考察した。特に余震発生の複雑さと規則性の生成要因についての詳しい考察を行った。モデルとしては、半無限等方均質弾性体の中の矩形断層ストライク・スリップ型断層を仮定し、断層の広がりに比べて非常に薄い断層帯が地下流体の流路と仮定した。また、断層帯の内部に局所化している高圧流体源の破壊により流体が流れ出し、破壊を発生させるものとする.破壊基準についてはCoulombの基準を採用した、本研究の主要な仮定は以下の二つである.すなわち,各断層要素で最初の破壊が起こるとそこでの(1)凝着強度は大きく低下する,ということと,(2)透水係数は増大するということである.シミュレーションの実行により,余震については大森公式およびグーテンベルグ・リヒターの式が統一的に数値シミュレーションにより再現できることがわかった(図2)。グーテンベルグ・リヒターの式をみたすものは繰り返しすべりを起こしている破壊であることもわかった。また、余震系列については、初期には比較的大きなイベントが起きる傾向にあるなど、観測事実と調和的である。また、複数の流体源があったり、未破壊領域の透水性がゼロに近いような場合は、二次余震が生じうることもわかった(図2)。
このように、地震破壊の成長と地下流体の移動の間の相互作用を考えることにより一見多様に見える地震現象を統一的に説明できる。
(7) 平成12年度の成果に関連深いもので、平成12年度に公表された成果:
Yamashita,T., Aftershock occurrence due to fluid migration in a fault zone, Absract of The 2nd ACES Workshop, 81-81, 2000.
山下輝夫、流体移動に伴う余震の発生、日本地震学会講演予稿集、B68, 2000.
(8)平成12年度のに達成された成果の、全体計画の中の位置づけ:
12年度までの研究により準静的な取り扱いで、前震—本震—余震系列、及び群発地震のモデル化が可能であることがわかった。しかし、もっと短い時間スケールの現象例えば、地震破壊の開始などについては、流体移動の動的効果を考慮する必要がある。それにより地下流体と地震破壊の動的相互作用の全体像が明らかになろう。
(9)この課題の実施担当連絡者:
氏名:山下輝夫
電話:03-5841-5699
FAX:03-5841-5693
Email:tyama@eri.u-tokyo.ac.jp
図の説明
図1 断層のモデル
図2 余震の規模の頻度分布と余震発生数の時間変化。C0およびC1は、破壊発生前および後の断層帯の透水率である。