(1) 課題番号: 0130(新規)
(2) 実施機関名: 東京大学地震研究所
(3) 実施課題名: GPS等の測地技術を用いた地殻過程の研究
(4) 本課題の5ヵ年計画の概要(以下の4-1、4-2、4-3について答える)
(4-1) 「地震予知のための新たな観測研究計画の推進について」(以下、建議)の項目:
1.(3)直前過程における地殻活動
(4-2) 関連する「建議」の項目 (建議のカタカナの項目まで、複数可):
(3)ア.
(4-3) 「5ヵ年計画全体としてのこの研究課題の概要と到達目標」に対する到達した成果:
本研究は,第7次の地震予知計画において「GPS総合観測研究」として実施してきたもののうち,稠密アレイを用いた地震発生直前の前駆現象をとらえる観測研究を引き継いだものである.本研究課題では,特に伊豆半島とその周辺で発生する地震活動に焦点をあて,GPSの稠密アレイを用いて詳細な地殻変動を検出すると共に,インバージョンなどのシミュレーション手法を併用して,断層面上の破壊の進行過程を詳細に捕らえようとするものである.本研究の実施によって、地震の直前に発生する物理プロセス、特に地殻流体の挙動、に関する理解が深まるものと期待される。
以上が到達目標であるが,これに対し,平成12年度は三宅島噴火に伴う三宅島—神津島間で発生した群発活動に焦点をあて,新島・神津島を中心とする地域においてGPSの稠密アレイを実施し,群発活動に伴うこの地域の地殻変動を検出するのに成功した他,期間を区切ったインバージョンを行って,開口クラックの進展状況を時間を追って追跡する事に成功した.この結果,開口クラックの大きいところと群発活動の領域によい一致が見られるなど,三宅島—神津島間で発生した群発地震活動のメカニズム解明が進んだ.
(5) 平成12年度成果の概要(以下の質問に答える)
(5-1) 「平成12年度全体計画骨子の補足説明 3.具体的な課題提案の背景」のどの項目を実施するのか:
(4)-1.地殻流体の実体の解明
(5-2) 平成12年度項目別実施計画のどの項目を実施するのか:
3. (Ib) テストフィールドでの野外観測
(5-3)平成12年度に実施された研究の概要:
伊東市周辺に設置された10観測点から構成される稠密アレイのGPS連続観測を前年度に引き続き続行し,来るべき群発活動に備えた.また,2000年6月には「大学連合」による約50観測点での稠密アレイ観測を実施した.
続いて,7月から活発化した神津島近海における地震活動に対処するため,神津島他近隣の島にGPS観測点を臨時に設置してGPS観測を実施し,基線解析を実施して地殻変動の推移を明らかにすると共に,国土地理院データをも取り込みつつ期間毎の測地インバージョンを適用した.この結果一連の地殻変動が三宅島—神津島間で発生している地震活動の領域において進展する開口クラックと神津島付近における地殻浅部の右横ずれ断層で説明可能であることを示した.さらに,この開口クラックの空間分布が地震の分布ともよくあうことを示した.
なお,この地震活動に対処するために,新たに神津島等に観測点を展開したほか,可能な点については携帯電話を使用したテレメータ観測も実施された.
ハ
(5-4)「平成12年度の到達目標」に対する成果の概要:
平成12年度は、特に神津島付近のデータについて精密な「時間依存インバージョン」を実施して、活動過程を明らかにすることを目標としたが,データの制約があって「時間依存インバージョン」を実施することはできなかった.しかし,引き続く地殻変動を主要地震の発生時に基づいて期間を区切りそれぞれの期間に発生した地殻変動データを作成し,測地インバージョンを実施したところ,北西—南東走向の地震活動線上に置かれた開口クラックと神津島近傍に置かれた右横ずれ断層でよくデータを説明できることが判明した.また,開口の大きな場所と地震活動によい一致が見られた.
このように,稠密GPSアレイ観測がこのような遷移的地殻活動に対して極めて有効であることが確認され,さらに,このような比較的小さな領域での緊急観測には1周波受信機が効果的である,などの技術的なノウハウの蓄積が出来た.
(5-5) 共同研究の有無:
全国共同研究(A)「GPS総合観測研究」(「GPS大学連合」が主体となる研究)
(6) この課題の実施担当連絡者(氏名、電話、FAX, e-mail)
氏名:加藤照之
電話:03-5802-8644 or 03-5841-5730
FAX:03-5689-7234
e-mail:teru@eri.u-tokyo.ac.jp