(1)課題番号:1201

(2)実施機関名:鹿児島大学理学部

(3)建議の項目:1.地震発生に至る地殻活動解明のための観測研究の推進

(1)定常的な広域地殻活動

(4)プレート境界域(トカラ列島−奄美大島)地殻活動総合観測

(5)関連する建議の他の項目:1.(1)ア、イ 1.(2) ア、イ 2(1) ア、イ

 

(6) 平成12年度の成果の概要:

 平成11年度に引き続き奄美大島で臨時地震観測を実施するとともに、平成12年度には新たに4点で臨時観測を開始した()。トカラ列島の宝島・横当島は平成12年7月から、悪石島は10月から、奄美大島の東方の喜界島は平成13年1月からである。このうち、宝島は移動式の衛星テレメータシステムを用い、データを鹿児島大学に伝送している。その他の観測点は現地記録収録方式である。横当島は無人島であるため、2台のデータロガーをスケジュールを組んで稼動させており、4ヶ月ごとに渡船で現地に出向きデータを回収している。臨時観測データは、逐次解析を進めつつある。

 2000年10月にトカラ列島悪石島近海でM5.7(悪石島で震度5強)の地震を含む活動があり、臨時観測の効果が見られた。図の白丸は、鹿児島大学の通常処理で決められた震央である(気象庁が決めた震央も大差ない)。一方、黄丸は悪石島と宝島の臨時観測点データを加えて決めた震央である。同一の地震は線で結んである。震央が、臨時観測データを加えることにより、東南東方向に20km程度移動していることがわかる。図には示されていないが、震源の深さは10〜30kmから9km付近に集中して求められている。

 

(7)平成12年度の成果に関連の深いもので、平成12年度に公表された成果:

地震調査研究本部地震調査委員会(2000年10月)への資料

139回地震予知連絡会(2000年10月)への資料

140回地震予知連絡会(2000年11月)への資料

森脇健・後藤和彦・八木原寛・平野舟一郎・角田寿喜、奄美大島付近の微小地震活動、日本地震学会講演予稿集、2000年秋季大会、B41、2000

 

(8)平成12年度に達成された成果の、全体計画の中での位置づけ:

本研究計画は、当該領域でのプレート間カップリングと地震発生準備過程の観測研究を

推進することである。既設観測点の整備が遅れており、また小さな離島が多いこの領域では、ボアホール型地震計などによる精度の高い観測データが得られる本格的な観測点の整備が必要である。地上設置の地震計による臨時観測では限度はあるが、当面は臨時観測によって当該領域の地震活動の詳細を把握していく計画である。

 

(9)この課題の実施担当連絡者:

氏名:後藤和彦

電話:099-244-7411

FAX:099-244-0145

E-mail:goto@sci.kagoshima-u.ac.jp

 

の説明

 

図:トカラ列島−奄美大島域の地震観測点の配置および2000年10月に悪石島近海で発生した地震の震央分布。赤四角は鹿児島大学の臨時観測点、青三角は気象庁の観測点である。また、白丸は鹿児島大学の通常処理で決められた震央、黄丸は悪石島・宝島の臨時観測点を加えて決められた震央であり、対応する地震は線で結ばれている。