研課題番号:0906 (0213(京大防災研)の「観測技術」と交換?)
課題名:南海トラフ巨大地震予知への総合研究
ー1)海底地殻活動モニタリングのための技術開発と観測研究ー
○12年度の研究実施と成果
数cmオーダーの位置決定精度をめざして開発中の海底地殻変動観測システムの基礎実験を行なった.本システムは船上ー海底間の超音波精密測距とキネマティックGPS測位による船位の決定をリンクさせたものである.本年度の基礎実験は,以下の期間・海域で行なった:
実験1:2000年 6月 潮岬東方沖 水深1100m
実験2:2000年
10月 駿河湾内 水深1450m
実験3:2001年 1月 駿河湾内 水深1450m
海底局の位置決定精度を上げるための工夫として,船を流しながら連続的に海底局の両側数本の測線上で面的に測距を行なった.キネマティックGPS測位の基準局は,実験1では観測海域から約20km離れた潮岬に,実験2では約150km離れた名古屋に,実験3では約40km離れた焼津にそれぞれ設置した.音響測距の際の音速構造は,実験2までは1次元構造(最適な音速値をサーチする)を,実験3についてはCTDの測定結果をもとにした構造を用いた.
実験1では海底局の水平方向位置決定誤差は20cmであった.その誤差が実験2では11cmに低下した.これらの実験から,我々のシステムの精度は確実に上昇しているといえる.ただし,実験2では,キネマティック測位の精度が著しく悪かった.この原因はGPS受信機の不備や基線長が長すぎたことにあると考えられる.そこで,GPS測位のRMSエラーが約1m以内のデータだけを用いて再決定したところ,海底局位置決定誤差が5cmに改善した(図906-1).海底局位置決定誤差には音響測距誤差とGPSの測位誤差の両方が含まれているが,この結果から,海底局位置決定誤差要因の大部分はGPSにあり,音響測距部分は実用化のレベルにあるといえる. GPS測位のRMSエラーが小さいデータだけを用いることはデータ数の減少につながるため,GPS測位誤差が大きいことは深刻な問題である.
そこで我々は,2つのキネマティックGPS精度評価実験を行なった(図906-2).最初の実験では,基地局を宇治市の京都大学防災研究所地震予知研究センター新館屋上に設置し,約110km離れた名古屋市の名古屋大学理学研究科屋上に移動局を設置した.移動局には,三脚を約20 m間隔に配置し固定した.この実験の結果,基線長が100kmを越える場合でも,移動距離が短ければ1〜2 cmの精度があることが確認された.基線長による精度の違いを評価する実験も行なった.次に,アンテナを長距離移動させたときの精度評価のために,三河湾内で漁船による移動実験を行なった.基準局を三河湾内の三谷におき,この点から15 〜20km離れたの3つの港に固定三脚を設置し,その位置を決定した.3つの港の間は,漁船を用いてアンテナを順次移動させた.この実験の結果,衛星配置が不安定な場合は,最初50 〜 100 cmずれた位置に決まり,10分以上かけて真の座標に収束することが分かった.衛星配置が安定している場合は,移動したアンテナを固定した直後の位置決定精度は10 cmであるが,その後5分未満で精度1 cm以内におさまった.
本年度に行なった基礎実験により,キネマティックGPSの精度さえクリアできれば,我々のシステムは実用に耐えうるものであることが明らかになった.GPSに関しても,衛星配置などを見極めてデータを選択すれば,長基線および移動による精度の低下はないことが確認された.
図の説明:
図906-1 海底局位置決定誤差とGPS測位誤差(2000年日本地震学会で発表)
図906-2 キネマティックGPS精度評価実験(2000年日本地震学会で発表)