(1)研課題番号:909 (新規, 追加)
(2)実施機関名:名古屋大学大学院理学研究科・工学研究科
(3)課題名:大都市圏強震動ネットワーク(中京圏)の構築
(4)本課題の5ヵ年計画の概要:
(4-1) 1−(1)定常的な広域地殻活動,
(4-2) 関連する新建議の項目:2(2)ア、3(1)イ
(4-3) 5ヵ年計画全体としてのこの研究課題の概要と到達目標:
強震動発生機構の研究のためにも,構造物に与える震動を評価する都市防災のためにも,自治体を始め各機関によって設置された強震計の波形記録を用いることは非常に重要なことである.特に都市域においては地方自治体、ライフライン企業、大学などによって、高密度な強震動観測ネットワークが構築されている。しかし、これらのデータは独自に管理されており、統一的に利用することはできなかった。このようなデータを効率的に収集し、全国的に共通したデータベース化を行い強震動記録を有効利用することを目的として、1999年度より全国6大学によって「大都市圏強震動総合観測ネットワークシステム」の構築が進められた。本報告では、このシステム構築の、東海地方での取り組みについて報告する。
(5) 平成12年度実施計画の概要:
(5-1) 3.(1)-1.広域応力場の不均質性、(2)-2-2.
東海・南海,十勝沖・釧路沖
(5-2) 平成12年度項目別実施計画の実施項目:
[強震観測ネットワークシステムの概要]
このシステムは、次の3つのシステムから構成される。
(1)強震動波形データネットワーク装置、
(2)強震動基準観測装置、
(3)機動強震動観測装置。
ここで、(1) は各種機関による、既存の強震観測ネットのデータを収集することを目的としている。 (2)
は岩盤における強震動の収集を目的とする。堆積平野の表層地盤の影響をうけていない波形として、強震動波形データの基準として使用される。 (3)
は比較的大きな地震が発生した場合や、観測点が手薄な場所に臨時に観測点を展開するためのシステムである。
(5-3) 平成12年度の成果の概要:
システムの中心である(1)には、データサーバとして収集した波形データをwin形式のフォーマットで保存し、統一化されたデータベースを保持するPC、ウェブサーバとして蓄積したデータをネットワーク上で提供するためのPCが含まれる。データの収集は、気象庁から送られてくる有感地震メールに基づいて行われる。有感地震メールを受け取ると、データサーバが各収集装置に指令を出し、波形データは自動的に収集される。このシステムでは、以下の強震観測ネットから提供される波形データを収集している.
[震度情報ネットワーク]
自治省消防局の補助事業によって整備されたもので、各市町村に計測震度計を設置し、計測震度と最大化速度値が送信される。計測震度は気象庁の速報に利用されている。愛知、三重県のシステムではダイヤルアップにより波形情報を取り出すことができる。愛知県では既存のシステムにおいて波形を回収しているので、インターネット経由でデータサーバに転送する。三重県では新たに波形収集用のPCを設置した。
[名古屋市]
科学技術庁の補助を受けて構築した地震被害予測システムの一部として、各区に一カ所以上の強震計が設置されている。既存のシステムにおいてすでに名古屋大学に波形データが転送されているので、このデータをミラーすることによりデータサーバへ格納。
[東邦ガス]
ガス供給ブロック遮断用に、濃尾平野の100個所以上にSIセンサ(水平2成分)を設置している。これらに記録される波形データは点検時に現地で回収する必要がある。本システムでは、既設点の内10点に新たに強震計を設置した。データは携帯電話またはPHSによって、収集装置に転送される。
[中部電力]
電力関係施設の地盤・建物に高密度の観測システムを持っている。これらの内、提供が可能な点のデータをISDN回線を通して収集。
[愛知工業大学]
キャンパス内に強震計ネットワークが展開されている。既設強震計のシリアルポートに新たにEthernetアダプタを接続し、大学内のサーバにLANを経由して転送後、インターネットを介してデータサーバに転送。
[名古屋大学:既設強震観測]
名古屋大学における、既存の強震観測および環境振動モニタリングシステムのデータを収集する。愛知工業大学と同様、地震計のシリアルポートにEthernetアダプタを接続し、LAN経由でデータを収集する。
[名古屋大学:基準観測]
名古屋大学理学研究科の微小地震観測点4点(宇賀渓、豊田、犬山、知多)に新たに強震計を設置し、既設のシステムにて連続記録を収録。イベント時には必要な区間の波形データをデータサーバに転送。また、岐阜県の計測震度ネットでは波形の記録機能がない。そのため、岐阜県南部の濃尾平野に含まれる地域の6個所に、既設震度計に併設する形で観測装置を設置した。データは、携帯電話またはPHSによって収集装置に転送される。
[名古屋大学:機動観測]
現在、養老断層に直行し濃尾平野内を東西方向に横断する側線と、名古屋市内の側線に仮設置してある。
図909-1には,このシステムで収集された波形データから計算された震度の例を示す.
(5-4) 5カ年計画のうちの平成12年度の計画の位置づけと平成12年度の到達目標:
収集した中京圏の強震動波形データは、ホームページで振動データを公開するとともに、濃尾平野の地下構造を取り入れた強震動予測のシミュレーションの精度を高めていく。東海・東南海地域の巨大地震に対する強震動予測を行っていく。平成12 年度は、強震計ネットワークを構築して波形データがほぼリアルタイムで収集可能となるようにし、同時にホームページで振動データを公開する。
(5-5) 共同研究の有無(機関・グループとの共同研究の場合は、その旨明記し、さらに観測の場合には、実施予定時期と場所、参加人数概数も明記する):
6 名、協力機関:愛知・三重・岐阜県、名古屋市、愛知工業大学、他、
(6) この課題の実施担当連絡者
氏名:山岡 耕春
電話:052-789-3034、
FAX:052-789-3047
E-mail:yamaoka@seis.nagoya-u.ac.jp