(1) 課題番号:0909

(2) 実施機関名:名古屋大学大学院理学研究科

(3) 課題名:海底地殻変動測定器の開発

(4) 本課題の5ヵ年計画の概要とその中での平成13年度までの成果

(4-1) 「地震予知のための新たな観測研究計画の推進について」(以下、建議)の項目:3.地殻活動シミュレーション手法と観測技術の開発, (2)観測技術

(4-2) 関連する「建議」の項目(建議のカタカナの項目まで): 1-(2)-イ,1-(2)-ウ,3-(2)-

(4-3) 5ヵ年計画全体としてのこの研究課題の概要と到達目標」に対する到達した成果:

 平成13年度までに,5−6cmの精度で海底局の位置を決定できる段階に達した.ただし,この誤差は1回の実験におけるランダム誤差であって,繰り返し観測した場合の系統誤差については,今後検討する必要がある.また,海底局位置の決定誤差要因の大部分はキネマティックGPSの測位精度にあることが判明した.測位・解析方法の改良,ソフトウエアの改良を行うことによって,キネマティックGPS測位精度を上げることができれば,1年間の繰り返し測定でフィリピン海プレートの運動を測ることができるものと期待される.

 

(5) 平成13年度成果の概要

(5-1) 「平成12年度全体計画骨子の補足説明 3.具体的な課題提案の背景」のどの項目を実施するのか:(2)-2-2

(5-2) 「平成12年度項目別実施計画」のどの項目を実施するのか:観測技術開発(3)(a)

(5-3) 平成13年度に実施された研究の概要:

 平成13年度には本課題に関連して,キネマティックGPS測位における精度評価の実験を以下の要領で実施した:

 ・移動局 京都府宇治市,10m間隔のピラーの間でアンテナを移動させた

 ・基準局 移動局から9261km離れた6点に設置

(5-4) 「平成13年度の到達目標」に対する成果の概要:

 基線長によるキネマティックGPS測位精度を評価するために,基準局と移動局を909-のように設置し,実験を行なった結果,以下の事柄が明らかになった:

1)基線長が長くなるにつれて系統誤差が2次関数的に増加することが明らかになった(909-).特に,50kmを越えるような基線長は設定するべきではないことが示唆される.したがって,南海トラフ等の海溝軸付近で測位を行う場合には,中継船やブイを間に浮かべて,基線長を短くする工夫が必要であろう.これに関しては今後の課題である.

2)スタティック測位では,PDOP56のデータのみを使用して測位を行うのが通例であるが,キネマティック測位では,さらに条件を厳しくして,PDOP3のデータのみしか用いてはならない.

(5-5) 共同研究の有無:

 基線長別キネマティックGPS精度評価実験を京大防災研・京大院理・神戸大理・高知大理(計24名)と合同で行なった.

(5-6) 平成13年度の成果に関連の深いもので、平成13年度に公表された成果:

[1] 田所敬一・安藤雅孝・佐藤一敏・山田卓司・奥田 隆・片尾 浩・岸本清行,音響測距−GPSリンクによる海底地殻変動観測システムの開発,地学雑誌,110355-3612001

[2] 田所敬一・安藤雅孝・山田卓司・佐藤一敏・奥田 隆,駿河湾での海底地殻変動観測,地球惑星科学合同大会,東京,20016月.

[3] 安藤雅孝・田所敬一・藤井直之・藤井 厳・奥田 隆・佐藤一敏・山田卓司,海底地殻変動の将来計画,地球惑星科学合同大会,東京,20016月.

[4] 安藤雅孝・田所敬一・奥田 隆・佐藤一敏・藤井直之,三宅島ー神津島間のダイク貫入モデルの検証:海底地殻変動観測から,地球惑星科学合同大会,東京,20016月.

[5] 山田卓司・田所敬一・ 佐藤一敏・安藤雅孝・ 奥田 隆・藤井 巖・尾池和夫,海底地殻変動観測システムの開発:音響測距測定誤差の定量的評価(2),地球惑星科学合同大会,東京,20016月.

[6] 佐藤一敏ほか,海底地殻変動モニタリングシステム開発に向けたkinematic GPSの位置決定精度評価:(1)基線長別精度評価実験,地球惑星科学合同大会,東京,20016月.

[7] 田所敬一・三宅 学・佐藤一敏・安藤雅孝・奥田 隆,新しいフェイズに入った海底地殻変動観測:長期繰り返し観測の開始,日本地震学会,鹿児島,200110月.

[8] 山田卓司・安藤雅孝・田所敬一・佐藤一敏・奥田隆・尾池和夫,海底地殻変動観測の測定誤差:海中音速構造の時間変化の影響,日本地震学会,鹿児島,200110月.

[9] 佐藤一敏・矢吹哲一朗・三宅 学・田所敬一・安藤雅孝・奥田 隆,キネマティックGPS解析ソフトウェアの違いにみる位置決定精度の評価:海底地殻変動観測システムの精度向上に向けて,日本地震学会,鹿児島,200110月.

 

(6) この計画の実施担当連絡者

氏名:安藤雅孝

電話:052-789-5390

Fax052-789-3047

e-mailando@seis.nagoya-u.ac.jp

 

909-1.基線長によるキネマティックGPS測位精度の評価実験.基準局(UJI)と移動局の位置図.

909-2.キネマティックGPS測位の系統誤差と基線長距離の関係