(1)課題番号:0215
(2)実施機関名:京都大学 防災研究所
(3)課題名:南海トラフ沿いの巨大地震の予知
(4)対応する新建議の項目
1.地震発生に至る地殻活動解明のための観測研究の推進
(3)直前過程における地殻活動
(5)具体的な課題提案の背景の項目:
(2)−2−2.東海・南海,十勝沖・釧路沖
(6)関連する建議の項目
(3)ア,?
(7)平成12年度までの研究成果と13年度計画の概要
平成13年度概算要求において本課題を当センターの重点課題と位置づけることとなり,その議論を受けて平成12年度より,11年度までの海底地震観測に加えて,ヒンジラインGPS観測とモデリング,及び地下水観測の2項目の研究を追加し,研究計画を拡充することとなった.各項目の12年度実施状況及び13年度計画の概要は以下のとおりである.
a)海底地震観測
7月〜10月の間,気象庁と合同で中之島東方海域において海底地震計6台による自然地震観測を実施した.南海トラフとひと続きの海溝である琉球海溝域の中でもひときわ活発な同海域の地震活動を精密に観測することが目的である.データは現在解析中.13年度は引き続き気象庁と合同で,沖縄本島・宮古島間の地震活動の極めて低調な海域で海底地震計による自然地震観測を予定している.陸上観測点がまったく無い同海域における地震活動の低さが本物かどうか検証することは,沈み込み帯の理解に重要である.
b)ヒンジラインGPS観測とモデリング
紀伊半島の昭和の東南海・南海地震による隆起・沈降の変換帯を横断し,プレート相対運動に平行なGPSトラバース観測網を設ける.これを繰り返し観測し詳細な変位・歪場の空間的変化を捉え,地殻及び上部マントル構造を取り込んだ数値モデルにより,現在の固着域の下限を推定することを目的とする.12年度は,国土地理院GEONET観測網を補完するかたちで,日置川〜印南(新設5ヶ所)と那智勝浦〜十津川(新設3ヶ所)の2本のトラバース測線を設置した.2001年1〜2月に第1回観測を実施する予定である.数値モデル計算については,別途予算により計算機の整備を行い,地震波速度構造等を参考にして構造モデルを作成しつつある.13年度においては,那智勝浦〜十津川測線と両測線の中間に新に観測点を設置し,観測を繰り返す.さらに,数値構造モデルによる計算を行う.
c)地下水観測
紀伊半島や四国の沿岸部で,昭和の南海地震に先行して地下水の低下が観測された.今年度は,昭和23年の水路部の報告から地下水位低下の地点を確認した.13年度は現地調査を行い,次の南海地震に向けて地下水の観測が行える地点を調査する.南海地震の前の地下水低下はプレスリップによる歪の緩和によると考えられるので,歪と地下水位の関係を調べるために奈良県にある屯鶴峯観測所の坑道内に50mのボーリング抗を設けた.平成13年には両者の連続観測を開始する.
また,本事業費外の予算で,構造モデル作成のための基礎資料を得るため,平成12年に四国西部でのNetwork−MT観測,および,同地域での広帯域MT観測も実施した.(Network-MTは,地震研,高知大,神戸大,鳥取大との共同、広帯域MT観測は鳥取大と高知大との共同)
(8)平成14年度の実施計画概要(予算・人員規模を含む)
紀伊半島のヒンジラインを横切るように地理院の観測網を補完したGPS観測網の繰り返し観測を実施する.さらに,それと連動させた地下水位または間隙水圧の連続観測を開始する.また,同時に数値構造モデルによる断層固着域推定のための計算を実行する.一方,紀伊半島もしくは四国沖南海トラフにおける自然地震観測を実施するとともに,予定されている西南日本の人工地震探査の結果やレシーバー関数解析などを用いて,精密な地震波速度構造の推定を行う.これと並行して,紀伊半島から日本海にぬける地域でNetwork-MT観測を実施するとともに,広帯域MT観測をスポット的に実施し,Network-MTでは解像度を得られない地殻上部の空間解像度をあげた,比抵抗構造モデルを求める.
人員規模:30人
(9)5カ年の到達目標に対する平成14年度の計画の位置づけ
次期の南海地震では,現在固着している領域が震源域となる可能性が高い.したがって,現在の固着域下端を稠密GPS観測により精度よく推定することにより,次期の南海地震の大きさを絞り込むことを目標とする.また,固着領域の広がりの変化を追うことにより,本震発生までの切迫性を評価することも長期的な視野に入れている.一方,次の南海巨大地震の前に固着領域の変化やプレスリップが発生するとすれば,陸上部ではヒンジライン付近で歪の変化および地下水位あるいは間隙水圧の変化が観測されるであろう.次の南海地震までは30〜40年以上あるが,今からこのような諸観測を行っておけば変化の傾向をより明確にとらえることができる.14年度には,2年間の変位場や歪・推移変化を検出し,数値構造モデルによりこの間の固着領域の推定を行う.
一連の琉球海溝域における観測と比較するため,南海地震想定震源域における観測を実施する.自然地震活動ならびに近地・遠地の地震波を用いて構造解析を行い,数値構造モデルの精密化を計る.
(10) この計画の実施担当連絡者
氏名:橋本 学
電話:0774-38-4191
FAX :0774-38-4190
e-mail:hasimoto@rcep.dpri.kyoto-u.ac.jp