第９章　「過去の大学地震観測網のデータベース化」研究計画

 

１．はじめに

 

地震予知研究に関係してこれまでに集積された大量のデータや研究成果などの各種資料を，総合的かつ多角的に広く活用することが，地震予知研究の進展に不可欠であるとともに，地震予知の基礎を支える地球科学全般の進展に役立つことが期待される．このため，地震予知計画発足以前のものも含め，地震予知に関する資料のデータベース化と長期的視野に立って資料を保存する体制の整備に努めることが，新たな地震予知研究のための建議の中でも要請されている．この建議を受けて地震予知協議会のもとに「過去の大学地震観測網のデータベース化」計画推進部会が平成１３年度に設置された．

平成１３年度には，各大学の地震観測網の震源要素データを，観測開始から１９９８年までの期間に限って収集し，データベース化の準備作業を実施した．ただし，各観測網において，電子ファイル化されている期間のデータを収集することを最優先として作業を行った．験震表や原簿のみのデータから電子ファイル化する作業については，今後の課題となっていた．

 

２．  平成１４年度の研究成果

 

昨年度から実施していた各観測網の１９９８年までの震源データを収集する作業を完了した．集めたデータを統合した全国大学地震震源データベース（仮称）を構築し，そのプロトタイプをデータ生産機関に配布して，修正・変更作業を実施する段階である．

また，験測値データベースの作成を目指して，各観測網の験測値ファイルを収集する作業に着手した．しかし，震源データファイルと比較すると験測値ファイルは，そのデータ容量が膨大なものであり，さらには，震源データと験測値ファイルとが統合されていない場合がある，等々，作業を進めていく段階で解決すべきいくつかの問題点が明らかになってきた．これらの問題点はまだ残ってはいるが，試作版データベースはその姿が見えつつある．

 

３．　今後の問題点

 

震源データベースと験測値データベースの試作版は，試用段階に来たが，これらを実際に活用していくためには市販の「データベース用ソフトウェア（オラクル）」が必要である．このソフトウェアを購入するための経費をどうするか，さらには，完成したデータベースの公開範囲をどのように設定するか（一般公開か，限定公開か？），など，検討すべき問題も残されている．

また，電子ファイル化されていないデータを電子化する作業，古い地震記録波形データのデータベース化など，解決すべき問題点も残されたままである．しかしながら，これらの作業は関係者のみのボランティアでは解決できるものではないことは明白であり，検討されるべき重要な課題と考えられる．