(1)課題番号:0317
(2)実施機関・部局名:北海道大学大学院理学研究科附属地震火山研究観測センター
(3)課題名:釧路沖大地震発生域での海底地殻構造と地震活動
(4)本課題の5カ年計画の概要とその中での平成14年度までの成果:
(4-1)「地震発生にいたる地殻活動解明のための観測研究の推進について」(以下,建議)の項目:(1) 定常的な広域地殻活動.ウ.プレート内部の不均質構造の解明
(4-2)「関連する建議の項目」
(1)ア・イ・ウ,(2)ア・エ
(4-3)「5カ年計画全体としてのこの研究課題の概要と到達目標」に対する到達した成果:
平成11年度,および12年度にそれぞれ27台の海底地震計を北海道苫小牧沖から釧路沖に設置し,観測期間中に起きた地震を陸上の合同観測網のデータと併合して震源再計算を行った。それによって海溝付近まで精度の高い震源カタログを得ることが出来た。その地震カタログからは海溝海側斜面付近での震源のリニアメント配列や沈み込む大平洋プレート上面のより滑らかな輪郭が明らかになった。平成12年度および13年度には,得られた高精度の震源決定を用いて当海域での地震波速度トモグラフィ解析を行い,千島弧と東北日本弧との衝突帯での3次元P波速度分布を推定した(図—1).その結果千島弧の下部地殻がこの衝突域でデラミナーションを形成し,1982年浦河沖地震はその前面で起きていたことを明らかにした (村井・他, 2002; Murai et al., 2003).
平成14年度は,1952年十勝沖地震の震源域での現在の精密な地震活動度を精査するために10台の海底地震計を設置した(図—2).今回の観測航海の詳細についてすでに報告されている(高波・他、2002; 高波・他, 2003)現在,取得されたデータの解明中である.
(5)平成14年度成果の概要:
(5—1)「平成12年度全体計画骨子の補足説明 3.具体的な課題提案の背景」のどの項目を実施したのか:
(2)プレート境界におけるカップリングの時空間
(2)—2—2 東海・南海、十勝沖・釧路沖
(5—2)平成14年度項目別実施計画のどの項目を実施したのか:
(1)プレート境界域の地殻活動及び不均質に関する研究
(5—3)平成14年度に実施された研究の概要:
「十勝沖地震の震源域での海底地震観測」.2002年7月20日、ISVは独立行政法人水産総合研究センター北海道区水産研究所と共同して、1952年十勝沖地震の震源域における最近の極微小地震〜微小地震の活動を調査するために自己浮上式海底地震計を当該震源域内に10台設置し、約2ヶ月間の連続観測を実施した.海底地震計の観測点配置図を図—2に示した.海底地震計設置のために傭船した船は、独立行政法人水産総合研究センター北海道区水産研究所所属の調査船「探海丸」である.7月19日釧路港での機材積み込み、十勝沖での海底地震計設置後、釧路沖、オホーツク海沿岸、稚内沖、そして日本海沿岸等で漁業調査を行い、7月23日に小樽港に入港した.そこでわれわれ海底地震観測のための要員と機材を降ろして海底地震計の設置航海を終えた.
海底地震計の回収は、9月10日〜9月12日、および9月19日〜9月20日に行った.傭船した船は、釧路市漁業組合所属の「ゆたか」である.この船は漁業監視を任務とした船で、船体の規模としては、長さ12.7m、幅3.23m、深さ1.27m、総トン数7.3トンである.初めの9月10日〜9月12日の航海では、9台の海底地震計を回収し、9月19日〜9月20日の航海で残りの1台を回収した.
すでにデータの再生作業が終了した. 観測期間に起きた地震のうち北大のルーチン観測で震源が求められた地震は約20個であり、それらはM1〜M2程度の微少地震がほとんどである.今回の海底地震計に記録されたデータを加えることによって精度の高い震源位置の空間分布を把握することが可能となり、その分布と1952年十勝沖地震のアスペリティ分布との関係を検討するために、目下、験測作業の最中である.
(5—4)当初設定した平成14年度の到達目標に対する成果の概要:
十勝沖の海溝側に起きている地震データを用いることによって今まで不明であった1952年十勝沖地震の震源域における3次元トモグラフィーを求めることが出来る.そのための地震データを今回の観測で獲得することが出来た.しかし、地震活動が極めて低い想定地震の震源域であることから観測期間内に発生した地震の数は少ないと予想されるが、いままでの海底地震観測によるデータを併合し、3次元トモグラフィーを求めるべく作業中である.
(5—5)共同研究の有無: 北大地震火山観測センターと独立行政法人水産総合研究センター北海道水産研究所との共同研究(15名).
観測実施期日:2002年7月20日〜9月20日.
観測場所:十勝沖(1952年十勝沖地震の震源域).
(5—6)平成14年度の成果に関連の深いもので、平成14年度に公表された成果論文
「高波鐵夫・村井芳夫・本多亮・西村裕一、勝俣啓以下省略、海底地震計による1952年十勝沖地震の震源域での地震観測—序報—、北海道大学地球物理研究報告、66、63-75、2003」
「Murai, Y., S. Akiyama, K. Katsumata, T. Takanami、 以下省略、Delamination
structure imaged in the source area of the 1952 Orakawa-oki
earthqauke, submitted to Geophys.
Res. Lett., 2003」
「高波鐵夫・村井芳夫・本多亮・西村裕一、勝俣啓、以下省略、海底地震計による1952年十勝沖地震の震源域での地震活動調査、日本地震学会予稿集(2002年度秋季大会)、P139、2002」
「村井芳夫・秋山諭・勝俣啓・高波鐵夫・渡辺智毅、以下省略、海底および陸上稠密観測から明らかになった日高衝突帯の地下構造、地球惑星科学関連学会(2002年合同大会)、S086-P002, 2002」
(6)この課題の実施担当連絡者:
氏名: 高波鐵夫 電話:011-706-4492, FAX: 011-746-7404
e-mail: ttaka@eos.hokudai.ac.jp
「図の説明」
図—1. 海域—陸域合同観測の地震データから推定された深さ別速度イメージ.
(a) 深さ15km, (b)深さ25km, (c)深さ35km,(d)45-km.
この合同観測によって、日高衝突帯の地下構造が明らかになって、衝突帯直下でのデラミネーションの形成を確認できた.
図—2. 海底地震計の配置図.
1952年十勝沖地震の震源域では、最近地震活動が低調である.震源域での微小地震の活動を調査するために海底地震計をその震源域内に10台展開した.観測期間は2002年7月20日から9月20日の約60日間である.