(1) 課題番号:1003
(2) 実施機関名:鳥取大学工学部
(3) 実施課題名:島根県東部空白域周辺の構造調査
(4) 本課題の5ヵ年計画の概要
(4-1)「地震予知のための新たな観測研究計画の推進について」(以下、建議)の項目: 1.(2)
(4-2) 関連する「建議」の項目:ウ
(4-3) 5ヵ年計画全体としてのこの研究課題の概要と到達目標:
山陰地域の島根県東部は日本海沿岸に沿って分布する活構造地域の中で、大地震が発生してから1000年以上が経過した、時空間的に地震活動の空白域であった。2000年鳥取県西部地震が10月6日に発生し、この地震の解明は西南日本の地震活動の応力場を求める上で重要なことである。平成13年度までは鳥取県西部地震域について、発震機構による応力場を求めた。山陰地域の第四紀火山との関連などを明らかにする。
2000年鳥取県西部地震の震源過程の解明は、内陸地震発生メカニズムの解明になる。過去の地震活動の経過を詳細に行うことが必要である。微小地震観測が始まった1976年以降の地震活動の解析を行い、11年前の1989年10月の群発地震以来、震源断層の形成が成されてきていることが明らかになっている。この経過を構造解析と地震活動解析から解明する。しかし、宍道湖南方の地震空白域についての評価は現在のところ定まっていない。今後も、そのための観測・研究を実施する。
(5)平成14年度実施計画の概要
(5-1) 「平成14年度全体計画骨子の補足説明 3.具体的な課題提案の背景」のどの項目を実施するのか:(3)−2
(5-2) 平成14年度項目別実施計画のどの項目を実施するのか:(1)2
(5-3) 平成14年度実施計画の概要:
山陰地域の島根県東部は日本海沿岸に沿って分布する活構造地域の中で、特異な地域として位置付けられ、時空間的に地震活動の空白域であった。この地域全体の構造・地震活動を明らかにすることは西南日本の応力場を求める上で重要な地域である。
今年度は2000年鳥取県西部地震の周辺域、特に平成14年9月16日に鳥取県中部で発生したM5.3の地震を含む余震活動について懐石を行った。そして、山陰地方の今までの地震活動について報告する。微小地震の帯状配列と、大地震の関係、1943年鳥取地震の余震域の時間的変遷を調査した。
山陰地方の過去の地震活動を見ると、880年の出雲地震以外は江戸時代の地震である。この間約700年間、この地方には地震の記載がない。種々の事情によって古文書が消失してしまったか、地史などの編纂が行われなかったためと考えられる。被害地震は1872年浜田地震、1927年北丹後地震、1942年鳥取地震、2000年鳥取県西部地震が記録される大地震である。鳥取県は20世紀に東と西に大地震が発生した珍しい地域である。
○鳥取県中部の地震(1983年10月31日、M=6.2)
鳥取地震以来最大の地震で、その余震分布は珍しい%型をしている。本震のとその直後に発生した地震(M5.7)の発震機構はほぼ東西主圧力の横ずれ断層型を示す。余震分布と発震機構の解析から、震源断層の走行は北西から南東で鳥取地震の断層と直交する左横ずれ断層である。また、震源断層に沿って、南東から北西方向に余震活動の移動があった。
○大山付近の地震(1985年7月4日、M=4.9)
地震の空白域である大山近傍で1985年6月から9月まで、関金町野添で鳴動が聞かれた地震活動があった。しかし、鳴動のあったときには目ぼしい地震活動が見られない。本震の発震機構からこの地震活動は鳥取県中部と同じ地殻応力で発生している。今後、大山山体内に地震が発生すれば注意することが必要である。
○2000年鳥取県西部地震(2000年10月6日、M7.3)
鳥取県西部の西伯郡、日野郡、米子市、境港市及び島根県東部、岡山県北部に大きな被害を出している。しかし、亡くなった人がない、火災の発生が0件、激しく揺れたのに全壊家屋が少ないなど、特筆すべきことである。鳥取県では、7月に米子市で災害訓練を実施していたので、災害対応・対策が迅速・適切に実行された。
本震は西伯町の地下10kmの所を震源として、震源断層は北北西−南南東の走行で、約20kmの長さの左横ずれ断層を示している。余震活動は、特異な分布を示している。多くの余震は震源断層に沿った細長い帯状の地域に集中し、本震の震源より南側(西伯町から日野町)では線状配列を示しているが、北側(西伯町から島根県伯太町・安来市)では余震分布が複雑で、時間経過とともに余震が多発している。最大余震M5.0も北の端近くに発生している。誘発地震群が2ヶ所あり、割算型の分布をしている。南西に約10km離れた日南−横田町ではM5.5の地震が発生し、その後この地域全体に地震が発生している。北東に約15km離れた大山の東付近の活動は微小地震が頻発した。東西50km以上の地域で地震活動が活発になった。地震活動の分布は規模の差はあるが、1983年鳥取県中部地震(M6.2)と同じ割算型の分布を示している。
○2002年鳥取県中部の地震(2002年9月16日、M5.3)
鳥取県西部地震の余震域は、割算型の分布を示し、大山から東で小地震が頻発する活動を示していた。2000年鳥取県西部地震から約2年後の平成14年9月16日に鳥取県中部地域で、マグニチュード5.3の地震が発生し、倉吉市高城地区で小被害を出した。この地震は2000年鳥取県西部地震(M7.3)が発生し、余震活動で誘発地震として2箇所の地震活動域があり、その1つである大山東の誘発地震域である。この地震活動を微小地震が発生していて、この中地震は倉吉市で震度4を記録する有感地震である。この地震の余震活動は本震−余震型で、地震活動は順調に減衰している。
1つの成果として、弓ヶ浜半島の地下構造探査を実施した。2000年鳥取県西部地震に近い弓ヶ浜半島の地下構造では、先端域の境港市で、2000年鳥取県西部地震では、境港市役所で震度5強、測候所は震度6弱となり、震度の大きな地域が帯状に存在し、これは地下構造による異常震域の出現であるので、弓ヶ浜半島の地下構造を調べた。今年度は微動観測による振動特性、重力観測による地下構造の対比を行った。北に位置する島根半島から急激な地盤の落ち込みがあり、最深部では約1000mに達し、米子市に向かって徐々に浅くなる構造が確認された。
(5-4) 5カ年計画のうちの平成14年度の計画の位置づけと平成14年度の到達目標:
2000年鳥取県西部地震の震源断層の特性を理解するために、周辺域の活動状況を研究して行く、そして弓ヶ浜半島地域の地下構造を明らかにして行く。
(5-5) 共同研究の有無:なし
(6) この課題の実施担当連絡者(氏名、電話、FAX, e-mail)
氏名:西田良平,電話:0857-31-5641,FAX:0857-31-5635,
e-mail: nishidar@cv.tottori-u.ac.jp
図1 2002年9月16日の鳥取県中部の地震(M5.3)
図2 周辺の地震活動
図3 鳥取県弓ヶ浜半島の地下構造(微動観測による卓越周期分布)
図4 鳥取県弓ヶ浜半島の地下構造(重力による2層構造)