（１）課題番号：0321

（２）実施機関・部局名：北海道大学大学院理学研究科附属地震火山研究観測センター

（３）課題名：釧路沖大地震発生域での海底地殻構造と地震活動

（４）対応する新建議の項目：

　　　１．地震発生にいたる地殻活動解明のための観測研究の推進

           (1) 定常的な広域地殻活動、ウ．プレート内部の不均質構造の解明

（５）「３．具体的な課題提案の背景」の項目：

　　　（１）広域応力場の形成メカニズム　（１）-１．広域応力場の不均質性

（６）関連する建議の項目

　　　１．（１）ア・イ・ウ，（２）ア・エ

（７）平成１４年度までの研究成果：

平成１１年度，および１２年度にそれぞれ２７台の海底地震計を北海道苫小牧沖から釧路沖に設置し，観測期間中に起きた地震を陸上の合同観測網のデータと併合して震源再計算を行った。それによって海溝付近まで精度の高い震源カタログを得ることが出来た。その地震カタログからは海溝海側斜面付近での震源のリニアメント配列や沈み込む大平洋プレート上面のより滑らかな輪郭が明らかになった。平成１２年度および１３年度には，得られた高精度の震源決定を用いて当海域での地震波速度トモグラフィ解析を行い，千島弧と東北日本弧との衝突帯での３次元P波速度分布を推定した．その結果千島弧の下部地殻がこの衝突域でデラミナーションを形成し，１９８２年浦河沖地震はその前面で起きていたことを明らかにした．

平成１４年度は，１９５２年十勝沖地震の震源域での現在の精密な地震活動度を精査するために１０台の海底地震計を設置した．現在，取得されたデータの解明中である．

（８）平成１５年度の実施計画概要：

　平成１１年度からの海底地震観測を継続する。とくに平成１５年度においては，十勝沖—釧路沖での精密な海底地下構造を求めるために約３０台の海底地震計とエアーガンを用いた海底地下構造調査を実施し，１９５２年十勝沖地震の震源域での沈み込むプレート上面付近の詳細な速度構造を求める。また沈み込むプレート上面からの地震波の反射強度を求め，これと地震活動との関連性について検証する。さらに自然地震カタログとこれらの制御地震データを併用して，プレート沈み込み帯での詳細な速度構造トモグラフィーを求める。これによって，さらに精密な速度構造トモグラフィーが求まる。またS波の走時データを加え，Vp／Vsのトモグラフィを求める。これらの一連の解析によって１９５２年十勝沖地震の想定震源域におけるプレート間のカップリング状況を明らかにし，大地震発生の可能性を検証する。

（９）５カ年の到達目標に対する平成１５年度の計画の位置づけ：

５カ年の到達目標としては，大地震発生が想定されているプレート境界での詳細な地下構造と減衰構造を求め，不均質状態の時空間変化を検証すること，そして地震の発生頻度や規模の時空間分布と速度構造との関係を調べ，地震発生ポテンシャル評価のための基礎資料を得ることを挙げてきた．

当海域で発生する大地震は，島弧側のプレートと海洋側のプレートとの境界におけるカップリング状態に支配されていると考えることができる。さらにこのカップリングの状態は，プレート境界での地下構造に強く依存しているはずであり，沈み込むプレート上面付近での詳細な地下構造を把握することによって，弾性歪みエネルギーを貯えやすく，アスペリティが高い固着的滑りを起こしやすい構造なのか，一方弾性歪みエネルギーの蓄積が難しく絶えずずるずると滑っていて安定滑りの生じやすい構造なのかを推定することができる。このようにアスペリティ分布を地下構造調査から推定することができるれば，想定大地震の応力解放量の空間的分布を見積もれ，大地震の震源過程と詳細な津波の発生メカニズムを予測できるはずである。

このような観点にたって，まず１９５２年十勝沖地震の想定震源域での速度構造トモグラフィを求める計画を立てたが，しかしながら十勝沖での自然地震の地震活動が極めて低調であったために，自然地震を用いたトモグラフィーによる速度構造の推定は困難であった．

　平成１５年度には，自然地震のデータの蓄積，解析に努めるとともに，エアーガンと海底地震計を用いた海底地下構造調査を実施する．沈み込むプレート上面付近での詳細な地下構造を明らかにし，沈み込むプレート上面付近でのカップリング状態を推定する．

（１０）この計画の実施担当連絡者：

氏名： 高波鐵夫　電話：011-706-4492, FAX: 011-746-7404　

e-mail: ttaka@eos.hokudai.ac.jp