(1) 課題番号： 0911（新規）

(2) 実施機関名：名古屋大学大学院環境学研究科

(3) 課題名：南海・駿河トラフ近傍における地殻活動の解明

(4) 対応する新建議の項目

　　1.地震発生に至る地殻活動解明のための観測研究の推進

　　　(1) 定常的な広域地殻活動

　　　　　ア．プレート運動とプレート境界域の調査

　　　　　イ．プレート間カップリングの空間分布の把握

　　　　　ウ．プレート内部の不均質構造の解明

(5)「3. 具体的な課題提案の背景」の項目：

　　(2)　プレート境界におけるカップリングの時空間変化

　　　(2)-1. プレート境界地震の予測

　　　(2)-2. テストフィールド

　　　(2)-2-2. 東海・南海

(6) 関連する建議の項目

　　１．（２）ア，１．（２）イ，１．（１）イ，１．（１）ウ，１．(３)ア，

　　１．（３）イ，３．（１）ア

(7) 平成14年度までの研究成果の概要

　平成１５年度からの新規課題である．最近のGPS観測から，フィリピン海プレート北端部では伊豆マイクロプレートが存在するがゆえに，駿河トラフでのプレート収束速度が今まで考えられてき4cm/yrよりも小さく，2cm/yrである可能性が示唆されている．このことは考えられている駿河トラフでの巨大地震の発生周期が伸びることを意味する．しかし，伊豆マイクロプレートについては，GPS観測が島嶼部に限られることことから観測データが不足する．一方，新たな沈み込み運動も考察されている銭州岩礁では，年単位の繰り返しGPS観測からプレート収束ベクトルの方位が45度ほど揺らぐことが検出されている．駿河湾内でも2cm/yrのプレート収束速度で御前崎などで観測されている沈降の上下変動を説明するには，駿河トラフから御前崎東方沖までプレートはカップリングすることなく沈み込み，駿河湾石花海下ではプレート間カップリングがないと推定される．また，石花海は海山の沈みこみから生成されているとも考えられ，プレスリップの開始域になりうると東海地震のシミュレーションから指摘されている．しかしながら，石花海では海底地震観測が断続的に実施されているに過ぎない．

　そこで，本研究では，駿河トラフ−銭洲海嶺のテクトニクスの解明の一歩として，海嶺付近の地震活動の分布およびメカニズムを明らかにするため，海底地震観測を実施する．また，陸上のＧＰＳ観測，銭洲計画，海底地殻変動観測（課題番号909）とも連携して，駿河湾内での正確なプレート収束速度を明らかにし，広範囲のテクトニクスという観点から議論する．具体的には，他の大学や研究機関と協力し，以下の研究を遂行する：

1)銭州・イナンバ・石花海における地殻変動によるプレート収束運動の解明

　銭州とイナンバにおいてGPSキャンペーン観測を，石花海ではGPSと音響による海底地殻変動観測を，年に数度の頻度で実施し，プレート収束運動をゆらぎも含め詳細に解明する．石花海で海底地殻変動連続観測を試み，プレート収束域近傍における地殻変動を検出し，プレート収束運動を解明する．断続的な観測ではプレート収束運動の揺らぎを議論するに不足するため，銭州・イナンバ・石花海でGPS連続観測を行う．

2)銭州・石花海における地震観測によるプレート境界の解明

　銭州岩礁周辺域では新たなプレート沈み込みも推定され，しかも地震活動も高い．また，石花海ではプレスリップも考えられる．そこでこれらの領域で海底地震観測をなかば連続的に実施し，プレート境界における構造をより明確にする．

　平成１３〜１４年度には，一部の機器の整備を行なった．

(8) 平成15年度計画の概要

1)銭州・イナンバ・石花海における地殻変動によるプレート収束運動の解明

　銭州・イナンバではGPS観測を2回実施し，観測される地殻水平変動ベクトルから伊豆マイクロプレートのテクトニクスを考察する．石花海ではGPS−音響結合方式による海底地殻変動観測を4回実施し，駿河トラフにおけるプレート収束運動を考察する．

2)銭州・石花海における地震観測によるプレート境界の解明

　銭州・石花海周辺域における地震活動とプレート境界構造を考察する．銭洲海嶺周辺域に７点の海底地震計を数ヶ月設置し，銭洲海嶺の地震の分布およびメカニズムの研究を実施する．

(9) 5ヶ年の到達目標に対する平成15年度の計画の位置づけ

　本計画の到達目標は，先に述べた駿河トラフにおけるプレート収束速度の「2cm/yr−4cm/yr問題」を解決することである．そのためには，伊豆マイクロプレートのテクトニクス（銭洲での二重沈み込みの可能性，石花海下でのプレート間カップリング等）を無視できない．そこで，平成１５年度は，GPS観測，海底地殻変動観測，海底地震観測から，銭洲海嶺周辺のテクトニクスを把握する．

(10) この計画の実施担当連絡者

氏名：田所敬一

電話：052-789-3042

FAX ：052-789-3047

e-mail: tad@seis.nagoya-u.ac.jp