(1) 課題番号 (新規の場合は，「新規」とする)　0107

(2) 実施機関名　　　東京大学地震研究所

(3) 課題名　　　　　繰り返し注水実験による野島断層の強度回復の検出および誘発

地震発生メカニズムの解明

(4) 対応する新建議の項目

㈽-1　地震発生に至る地殻活動解明のための観測研究の推進

(5)「3. 具体的な課題提案の背景」の項目：

対応なし

(6) 関連する建議の項目

㈽-1-(2)-イ，㈽-1-(2)-ウ，㈽-1-(2)-エ，㈽-3-(2)-ウ

(7) 平成14年度までの研究成果の概要

1997年および2000年に行った注水実験により得られたデータの解析を行った．注水に

伴って観測された歪変化の特徴は，歪３成分は注水開始直後から縮みはじめ，数日の

時定数をもつ指数関数的な時間変化を示し，注水開始以降の最大主歪，最小主歪およ

び最小主歪の方向の時間変化は，最小主歪の方向は注水に伴う最大縮の方向を示して

いる（N40E〜N60E）ことがわかった．

均質な岩盤において深さ550ｍ地点（注水深度）を中心とする点対称な浸透流が生じ

た と仮定して，注水時の歪変化を計算した．このとき，岩盤の透水性を表す透水係数k

と 比貯留係数Ssの比を未知量として，予測された歪変化と観測値との差が最小となるよ うにk/Ss値を決めた．k/Ss値が大きいほど，岩盤の透水性が高いことを示す．この計 算から予測値は2000年第4回注水における最小主歪を除いて，注水にともなう歪変化

と ほぼあっていること，最小主歪の方向である北東—南西方向に岩盤の透水性が高いこ と，2000年の注水試験では，最小主歪および最大主歪から求めたk/Ss値が，時間経過 につれて互いに近づく時間的変化を示したこと， 2000年第2〜４回注水から求めた

k/Ss値と1997年第3回注水から求めたk/Ss値の比較と， 1997年の注水試験とでは2000

年の注水試験では，歪の回復過程が異なることなどから， 2000年とくらべて1997年

に おける岩盤の透水性が高く，破砕が発達していたことなどがわかった．

1996年５月の観測開始以来のデータについて潮汐のM2分潮の振幅位相の時間変化を調

べたところ，歪成分のうち断層に平行な成分において2000年半ばに顕著な振幅変化が

見出された．これはボアホールを密閉したためである．

(8) 平成15年度計画の概要

800mボアホール内に設置された地殻活動総合観測装置による歪・傾斜観測を継続す

る．観測点近傍の断層の存在とその固着状態により観測点で得られた歪・傾斜潮汐の

振幅・位相の時間変化にどのような影響を与えるかをシミュレーションにより明らか

にする．そのシミュレーションをもとに，平成８年，平成９年に行われた注水実験よ

り得られた歪・傾斜変化結果と７年間の歪・傾斜データを用いて求めた歪・傾斜潮汐

の振幅・位相と気圧応答の時間変化が野島断層の固着状態のどのような変化対応する

かを検討し，観測開始以降の野島断層の固着過程を明らかにする．

(9) 5ヶ年の到達目標に対する平成15年度の計画の位置づけ

野島断層近傍における地殻変動観測を地震発生直後から行い，地震断層近傍の歪・傾

斜変化を通して地震断層の回復過程を明らかにすることを目標にする．平成15年度は

歪・傾斜変化への観測点近傍に存在する断層の影響をシミュレーションにより明らか

にし，その結果と観測結果との対比を通して野島断層の固着回復過程を明らかにする

ことを試みる．

(10)この計画の実施担当連絡者

氏名：佐野　修

電話：03-5841-5892　

FAX ：03-3813-8026　

e-mail: osano@eri.u-tokyo.ac.jp