(1) 課題番号: 214
(2) 実施機関名:京都大学防災研究所
(3) 課題名:活断層周辺の応力蓄積過程の研究
(4) 対応する新建議の項目:
1.地震発生に至る地殻活動解明のための観測研究の推進
(2)準備過程における地殻活動
(5)「3. 具体的な課題提案の背景」の項目:
(3)-1、関連するものとして、(3)-2、(3)-3、(4)-1、(1)-3-1、
(6) 関連する建議の項目:1, (2)イ、ウ、エ
(7) 平成14年度までの研究成果の概要
・中部及び西日本のいくつかの代表的活断層周辺でそれぞれの断層に応じた手法を用いて、物理的コントラストや不均質が歪蓄積過程とどのように関連するかを調べてきた。歪蓄積過程の実態を解明するには基本的に長期のデータ蓄積を必要とするがその基礎データの取得と今後の観測展開に必要なデータの取得を進めてきた。(これまで概算要求としては認められなかったためそれぞれ関連する項目による費用による観測のデータを使用している)
・跡津川断層では稠密地震観測網を設置し,断層付近の詳細な震源決定を実施している.その結果,クリープ域とそうでない地域の特徴的な震源分布を得た.クリープ地域では地震の上限および下限ともに深く7-17km、その両側では地震発生層浅くなっており,深さ3-12kmである.また,断層系を構成する跡津川断層,及び茂住祐延断層では,深さ3km程度から地震発生層の底まで,それぞれ異なった面でほぼ垂直に地震が発生していることがわかった.さらに,発震機構のデータも蓄積されつつあるが,断層の中央部では,断層と調和的な横ずれ型だが,断層の端の部分では逆断層型の地震が多発しており,地表での断層のかたちが,地震発生層の応力場と関連しているようである.地震の大きさが小さいので,信頼性のあるデータ蓄積には時間を要する.・花折断層では、稠密GPS観測網において、キャンペーン観測の繰り返しと2本の1周波連続観測線で、琵琶湖西岸断層群を含む断層南部周辺の歪蓄積状態を測定している。この地域は神戸・新潟を結ぶ高歪速度地帯中に位置している。断層から離れた部分も含む範囲にgraduallyに歪が生じていることが測られつつある。
・鹿野吉岡断層を含む鳥取県東部で一連の広帯域MT観測による比抵抗構造調査を鳥取大学などと共同で実施した。微小地震発生下限を境として深部、浅部それぞれの比抵抗構造と相互のコントラストの存在が明らかになった。
(8) 平成15年度計画の概要
・跡津川断層周辺では速度構造データと併せた稠密観測網のデータ解析をさらに進めることで高精度震源分布データを蓄積し断層深部の反射面の位置と形状の確定と時間変化の研究を進める。加えて応力場の解析も行う。
・花折断層周辺では、GPSキャンペーン観測点のいくつかを連続観測化、また1周波点の2周波化を図り歪速度の決定誤差を小さくするとともに、過去のデータと合わせて領域内での5km程度のスケールの歪速度分布図を作成する。広帯域MT観測を実施する。
・吉岡鹿野断層周辺地域では、同地域を含むもっと広い山陰地方の比抵抗データが得られているのでその処理・解析を引き続き行ない比抵抗構造の全体像を明らかにし、その一環として断層の比抵抗面からみたモデル化をすすめる。
(9) 5ヶ年の到達目標に対する平成15年度の計画の位置づけ
計画自体は当初の5ヵ年計画から暫時、最終年度を15年度とするように切り詰められてきているが、関連する項目の研究観測と併行させることで、基礎データを蓄積していくように努めてきた。精密震源データやGPSデータはデータ蓄積に時間を要するため、様々な方策により観測を継続するように務めてきており、これらのデータは計画最終年度として後の研究の発展に寄与できる形でまとめられる。また構造決定などは当初計画に未到達な部分を重点とするとともに、鳥取県西部地震の発生という大きな状況変化に応じて地域的な拡大など当初計画から発展し、活断層研究独自の枠よりも広い形で実施される部分も含まれている。
(10)この計画の実施担当連絡者
氏名:大谷文夫
電話&FAX: 0774-38-4228,
e-mail:ohya@rcep.dpri.kyoto-u.ac.jp