(1) 課題番号： 0903

(2) 実施機関名：名古屋大学環境学研究科

(3) 課題名：東海・東南海地震の震源域の変動とプレート間巨大地震の発生予測

(4) 対応する新建議の項目

1.地震発生に至る地殻活動解明のための観測研究の推進

(1) (2) 準備過程における地殻活動

(5)「3. 具体的な課題提案の背景」の項目：

(2) プレート境界におけるカップリングの時空間変化

(6) 関連する建議の項目

1.(1) ア・イ・ウ，(2) エ

(7) 平成14年度までの研究成果の概要

　1)東海地域におけるプレートカップリングモデルの再検討

　すでに鷺谷によりバックスリップモデルが考察されているが、最大スリップ速度が4cm/yr、上下変動が過少推定などの問題点を有する。その後のGPS観測結果からも駿河トラフでの収束速度は2cm/yrと推定されている。2cm/yrの収束速度、20年間観測されている上下変動、最近4年間の水平変動ベクトルが説明可能なモデルを考察した。その結果、カップリングが御前崎直下から開始し、三河湾域まで達することにより東海地域の地殻変動が説明可能な東海地域におけるバックスリップモデルを構築した。

　2)2001年スロースリップの解明

　小澤らにより断層モデルが提案されている。より断層モデルを明確にするために、上下変動データも加えて再検討した。スロスリップモデルとして、浜名湖から三河湾北岸域の地下30kmで70×15kmの断層がプレートの沈み込みとは逆の東南東へ15cmのすべりを考察した。観測された上下変動の広がりがより広い断層を推定することは困難である。また、まだ分解能が十分出ないながらも、このスロースリップが断層の西端から東端へ時間的に移動したことを示唆するGPS解析成果を得ている。

　3)過去の東海地域におけるプレート間カップリングの時間変動の検討

　辺長や上下変動のデータは東海地域での最近20年間にスロースリップが数回発生したことを示唆する。このスロースリップイベントをより明確にするために、愛知県下の潮位データの収録を実施した。まだ不十分な検討であるが、東海域ではプレート間カップリングに時間的なゆらぎが示唆される。

(8) 平成15年度計画の概要

　1)2001年スロースリップイベントのより詳細なモデル化とそのモニター

　より高精度なGPS解析にもとづき、2000年イベントの断層モデルとその時間発展モデルを考察する。また、現在もスロースリップは進行中であり、より詳細にモニターするために、地理院GPS観測網を補完するようにGPS観測網を拡充する。

　2)1944年東南海地震以降のプレート間カップリングの変動とスロースリップイベントの解明

　東海域では1946年以降、プレート間カップリングの時空間的なゆらぎが示唆されている。時空間的なゆらぎをより詳細に解明するために、水準測量、験潮、地殻変動連続観測データベース化を進め、過去のプレート間カップリングとスロースリップを解明する。

　3)より高精度なGPS観測技術の開発

　東海域ではスロースリップイベントが繰り返し発生していた可能性は高い。また、スロースリップイベントが東南海地震のトリガーになる可能性も高い。そのような背景から、Real Time Kinematic (RTK) GPS観測のより高精度化とリアルタイムモニター化を進める。

(9) 5ヶ年の到達目標に対する平成15年度の計画の位置づけ

　5ヶ年の到達目標として、東海域におけるプレート間カップリングの詳細な解明から、同域における巨大地震準備過程を明確にすることである。そして、2001年の東海スロースリップ発生はプレートの固着域と考えられていた東海域でも巨大地震の発生なしでもプレート間カップリングが揺らぐことを示している。

　しかしながら、2001年スロースリップもGPS解析に年周変化が含まれることや2000年三宅･神津島イベントと時間的に重複することから、断層域の広がり、その時間的発展などまだ十分に明確になっていない。さらに、過去にも同様なスロースリップイベントが進行したと示唆されながら、データが不十分、しかも十分に整理できていないなどの理由から研究が遅れている。観測されているスロースリップイベントが巨大地震のトリガーになる可能性も存在しながら、的確なリアルタイムモニターシステムも構築されていない。

　以上の観点から、15年度の計画では、現在進行しているスロースリップイベントの断層域の解明、時間発展モデルの構築、同域における過去のスロースリップ履歴を明確にすることにより、東海・東南海地震震源域における地震準備過程がより明確にできると考える。そして、より高精度なリアルタイムモニターとしてRTKGPS観測の実用化を試みる。

(10) この計画の実施担当連絡者

氏名：木股文昭

電話：052-789-3040

FAX：052-789-3047

E-mail：kimata@seis.nagoya-u.ac.jp