「震源過程と強震動」15年度の研究実施計画

「直前過程における地殻活動」計画推進部会

 

平成14年1月11日

 

 

 震源過程を詳しく調べることにより、地震時断層すべりの大きい領域(アスペリティ)やそれに関連した応力変化(応力降下と相対強度)が得られる。この応力変化は地震発生直前の応力・強度分布に関係した"地震直前環境"を反映したものとみなせる。

 地震の破壊過程や強震動の生成を考える上で断層面上のアスペリティ分布は重要である。地震予知の観点からは、破壊の開始域とアスペリティ域、さらにはその周辺領域の摩擦すべり特性の違いも重要である。このような詳細な破壊過程を調べるために近地の強震計データは必要不可欠であり、また、その解析において不均一構造の影響を定量的に評価することが重要である。この場合、不均一構造の影響を2つの観点から評価する必要がある。1つは、波動伝播に対する影響、もう1つは、破壊過程そのものに対する影響を明らかにすることである。これらは信頼性の高い強震動予測シミュレーションにとっても必須である。

 そこで5ヶ年計画では、「3次元波動シミュレーションを取り入れた波形インバージョン法の開発」と「総合テストフィールド観測網の整備・観測実施」を目的として掲げた。13年度までの計画は主に手法の開発とマスターモデルの構築を中心としたものであるが、14、15年度の計画はそれらを実際に動かすシステムの構築と実用化のチェックを目指す。これらの当初目的は概ね達成されつつある。

 今後は単なる「震源・強震動」の範囲を超えて、準備過程・直前過程の解明と密接な関係のあるテーマへと研究を進めていくことが求められる。

 15年度の具体的課題は以下の通りである。

 

(A)3次元不均一構造、活断層の形状などのマスターモデルに基づいて強震動シミュレーションを行い強震動予測地図の作成を試みる。

(B)3次元波動計算を取り入れた波形インバージョンを強震動総合観測ネットワークの波形データに適用し、中規模地震に関係したアスペリティの抽出を行う。

(C)地震記象の解析から得られるアスペリティ分布、GPSデータによるバックスリップ分布、及び、プレート境界面の反射構造の比較検討を行う。

(D)山崎断層で地震活動や歪・地下水変化と大きい地震の関係を調べる。地震活動については、どのぐらい小さい地震が普段に起きているか、また、微小地震の震源は山崎断層とどういう関係があるかなど、平成15年度までに結果を出す予定である。また、地震波形データ使って、断層構造とsite response を調べる。この情報でM7のシナリオ震度分布を計算する。