(1) 課題番号 (新規の場合は，「新規」とする)０１１４
(2) 実施機関名 東京大学地震研究所
(3) 課題名 島弧下における電磁気学的不均質に関する観測研究
(4) 対応する新建議の項目
１．地震発生に至る地殻活動解明のための観測研究の推進
（１）定常的な広域地殻活動
(5)「3. 具体的な課題提案の背景」の項目：
（１）広域応力場の形成メカニズム
（１）−２ 境界条件
（１）−２−３ 日本列島の下側の境界条件
（１）−３ 変形特性
（１）−３−１ 地殻・最上部マントルの変形特性
（４）地震発生に対する地殻流体の役割
（４）−１ 地殻流体の実体の解明
（４）−３ 島弧の変形に対する地殻流体の役割
（４）−３−１ 下部地殻
（４）−３−２ 上部地殻
(6) 関連する建議の項目
１．（１）ウ，（２）イ，ウ，エ
(7) 平成14年度までの研究成果の概要
島弧マントルスケールの大局的電気伝導度構造決定（ネットワークＭＴ観測「ＮＭＴ観測」）と，特定の地殻活動地域スケールの電気伝導度精密構造決定（広帯域ＭＴ観測「ＷＢＭＴ観測」）とを目指した全国大学・国立研究所共同観測研究を実施する．
ＮＭＴ観測では，平成11年度から13年度にかけて，中国・四国地方西部（島根，広島，山口，愛媛，高知各県），紀伊半島地域（三重県），北海道北部・西部各地において観測を実施した．平成14年度においては，紀伊半島地域（和歌山県）での観測を行ったが，データの質が昼間，著しく悪いため，夜間のみのデータを用いてスタックを行うべく，一領域につき，やや長期間（５ヶ月）データを取得することにした．次回の観測域の移動は，平成１５年１月中旬に行う予定である．中部四国地域のデータのとりまとめと再解析が進み，２次元インヴァージョンで構造を求めた．また，3次元インヴァージョン手法の開発を進め，ほぼ完成し，比較的小規模のデータセットについて，その適用を試みている．
ＷＢＭＴ観測では，平成11年度には，前年度の補充観測として奥羽脊梁山地で9点，さらにその西側の出羽丘陵域で13点のアレイ観測を実施した．平成12，13年度には，日高衝突帯（大滝村から浦幌町に至る東西約２００ｋｍ）でのべ３５点でのWBMT観測を行った．また，鳥取県西部地震震源域（鳥取県米子市から岡山県神郷町に至る南北約４０ｋｍ）でのべ１２点でのWBMT観測を行った．それらの２次元解析から，断層に沿う低比抵抗帯の存在や，地殻活動，微小地震分布との関連が明らかとなった．平成14年度においては，フィリピン海プレート北縁部の構造を決定することも視野に入れ，富士山地域において広帯域MT観測を実施した．鳥取西部地震断層域にて人工電流源を用いたCSMT法構造探査を試みた．また，現在相対的に地震空白域となっている島根県東部地域において，予察的な広帯域MT観測を実施した．これらのデータについては，現在解析が進行中である．また，電気伝導度構造から地殻内の水の含有量を推定する試みを行い，電気伝導度構造や地震波速度構造などを総合的に解釈していく必要性を明らかにした．
(8) 平成15年度計画の概要
平成11年度からのＮＭＴ，WBMT観測を継続し，引き続き，電気伝導度構造と地域のテクトニクス，地震発生域との関連を調査する．ＮＭＴについては紀伊半島地域の観測（和歌山県，奈良県）を実施し，ＷＢＭＴについては富士山周辺域，島根県東部地域での観測を実施する予定である．14年度に一応の完成をみた３次元コードの改良を図りいくつかの地域において適用して構造決定を行う．また，電気伝度構造が地下の状態に対していかなる情報をもたらすかを総括し，この5年間の研究のとりまとめを行う．
(9) 5ヶ年の到達目標に対する平成15年度の計画の位置づけ
地殻活動シュミレーションモデルに組み込むための物質や場の条件（温度や、水・メルトの含有量、ぬれ角の分布）に制約を与えることを目標としてきた。このために、島弧マントルスケールの大局的電気伝導度構造決定（ＮＭＴ観測）と、特定の地殻活動地域スケールの電気伝導度精密構造決定（ＷＢＭＴ観測ないしは人工電流源を用いた探査）とを目指した全国大学・国立研究所共同観測研究を実施してきた。
平成１５年度は，５ヶ年の最終年度であり，基本的には先行する４年間で行ってきた観測のとりまとめ，総括を行う．しかし，NMT観測については，紀伊半島における観測が完了していない状態であるのでそこでの観測を実施する．また，14年度の観測を補充，対照する目的で，富士山周辺域，島根県東部地域での観測を実施する．これまでに得られたデータのとりまとめを行い，NMTについては異なるテクトニクスが卓越している地域の構造の対比，WBMTについては主要な地震断層・活断層周辺部の詳細な環境の異なる断層での結果を対比させ，断層下部や地殻下部の比抵抗構造，断層および周辺部での地殻内流体分布の特徴を把握する．
(10)この計画の実施担当連絡者
氏名：上嶋誠
電話：03-5841-5739
FAX ：03-5689-7234
e-mail:uyeshima@eri.u-tokyo.ac.jp