(1) 課題番号  0119

(2) 実施機関名  東京大学地震研究所

(3) 課題名  フィリピン海プレートの運動の空間的変化の研究

(4) 本課題の5ヵ年計画の概要とその成果

(4-1) 「地震予知のための新たな観測研究計画の推進について」(以下,建議)の項目:

    1(2)1(3)1(4)

(4-2) 関連する「建議」の項目: 1(1)イ,1(2)ア,イ

(4-3) 5ヵ年計画全体の目標:地震地殻変動観測センターの地震および地殻変動の広域観測網と機動的観測(陸域及び海域)によって,フィリピン海プレート,伊豆弧と西南日本弧とのプレート間結合の空間的不均質について,理解をすすめる.

(4-45ヶ年計画の実施状況の概要と主要な成果:

 この5年間は,地震地殻変動観測センターの地震および地殻変動の広域観測網と機動的観測(陸域及び海域)によって,フィリピン海プレート,伊豆弧と西南日本弧とのプレート間結合の空間的不均質について,理解をすすめてきた.

 11年度は,機動観測により上高地の群発地震活動の詳細を明らかにした.

 12年度は,神津島・三宅島近海において海底地震計による繰り返し観測とブイテレメーターによる準リアルタイム観測をおこなった.また,機動観測により鳥取県西部地震の余震活動と余効変動,三重県中部の地震活動を明らかにした.

 13年度は,引き続き三宅島噴火のマグマ活動に関連する神津島・新島近海の地震活動の海陸統合解析をすすめたほか,三重県中部の地震活動,和歌山・奈良県境の群発地震活動を明らかにした.

 14年度は,三宅島噴火のマグマ活動に関連する神津島・新島近海の地震活動の理解をすすめ、地震活動と構造の低速度域との対応を明らかにしたほか,八丈島および近海の地震活動の解析をすすめた.引き続き三重県中部の群発地震活動,和歌山・奈良県境の群発地震活動の詳細を明らかにした.徳島県池田町で1周波GPS受信機による機動的な長期連続観測を行い中央構造線に関連する地殻変動観測を実施したが,特に異常な変動データは認められなかった.

 15年度は,引き続き三宅島噴火のマグマ活動に関連する神津島・新島近海の地震活動の海陸統合解析をすすめた。その結果,三宅島下でのマグマの上昇だけでなく,海域でのマグマの上昇過程がみられ,2000年のイベントの全体像が求められた(図1、図2).GPS地殻変動観測や重力観測,電磁気観測などの解析結果と合わせて考察することによって,フィリピン海プレート北西端での地殻活動の変化が明らかになった.その他、和歌山県南部で観測された群発地震活動は,三重県中部の地震活動や和歌山県・奈良県境の群発地震活動などと同様に,紀伊半島下で発生している低周波地震(低周波微動)の帯状分布の直上の地殻内で発生している(図3).この地殻内群発地震活動と深部低周波地震活動とを比較し,フィリピン海プレートと西南日本弧とのプレート間結合の空間的不均質について,理解をすすめている.

(4-55ヶ年で得られた成果の地震予知研究における位置づけ:プレート間地震の予測には,プレート同士の結合状態を知る必要がある.フィリピン海プレートにおいては,伊豆弧と西南日本弧とのプレート間結合の空間的不均質について理解を深めた.

(4-6)当初目標に対する到達度と今後の展望:フィリピン海プレート北東端や紀伊半島下におけるプレート間結合の空間的不均質について,理解がすすめられた.地震研究所地震地殻変動観測センターの観測所(筑波地震観測所,油壷地殻変動観測所,鋸山地殻変動観測所,和歌山地震観測所,広島地震観測所,弥彦地殻変動観測所,堂平地震観測所,信越地震観測所,富士川地殻変動観測所,室戸地殻変動観測所)の施設を使って観測網を高度化しながら継続的に実施する.

(4-7) 共同研究の有無:全国の大学などと連携してデータを得ている.

(5) この研究によって得られた成果を公表した文献のリスト

(5-1)過去5年間に発表された主要論文(5編程度以内):

酒井慎一,山田知朗,他10名,地震活動から見た三宅島2000年噴火時のマグマの移動,地学雑誌,110145-1552001

卜部卓,酒井慎一,伊豆諸島地域の地震観測の現状とそれによって得られた結果,月刊地球,2212857-8632000.

(5-2)平成15年度に公表された論文・報告:

東京大学地震研究所地震地殻変動観測センター,伊豆半島および伊豆諸島周辺の地震活動(20025月〜200210月),地震予知連絡会会報,69216-218.

萩原弘子ほか,三宅島・神津島近海の3次元速度構造(4),地球惑星科学関連学会2003年合同大会,S053-P001.

中道治久ほか,富士山の深部低周波地震の精密震源再決定(1998年〜2001年),地球惑星科学関連学会2003年合同大会,S045-P006.

酒井慎一ほか,三宅島周辺の地震活動(まとめ),日本地震学会2003年度秋季大会,P085.

萩原弘子ほか,三宅島・神津島近海の3次元速度構造とb値,日本地震学会2003年度秋季大会,P086.

(6) この課題の実施担当連絡者:

氏名:金沢敏彦  東京大学地震研究所地震地殻変動観測センター

電話: 03-5841-5780

FAX 03-5841-8265

e-mailkanazawa@eri.u-tokyo.ac.jp

 

 

 

 

図の説明

1

 三宅島・神津島間の地震活動(200073日〜5日)。海底地震計の読み取り値を使った精度の良い震源を、震源の配列方向である北から50度西へ回転した震央分布とそれぞれの方向の深さ断面図。バースト(1時間にM3以上の地震が30個以上観測される時間が2時間以上続くもの)ごとに色をつけた。

 

2

 200073日〜5日に発生した地震の深さの時間変化。図1と同様に、バーストごとに色をつけている。各バーストは深部から始まり、約1km/時の速度で上昇している。

 

3

 紀伊半島南部の地殻内群発地震活動と低周波地震(低周波微動)。最近5年間で紀伊半島では、三重県中部の地震(ピンク)、和歌山県・奈良県境の群発地震(オレンジ)と和歌山県南部の群発地震(赤)が発生している。これらは、低周波地震(低周波微動)(水色)の帯状分布の直上で発生している。