(1)課題番号:0129

 

(2)実施機関名:東京大学地震研究所,名古屋大学

 

(3) 課題名:深部ボアホールにおける回収型インテリジェント歪み計を用いた初期応力測定システムの確立

 

(4) 本課題の5ヵ年計画の概要とその成果(以下の4-14-3について答える)

 

(4-1) 「地震予知のための新たな観測研究計画の推進について」(以下、建議)の項目:

(数字の項目まで、最も関連の深い項目を記入する)

  ㈽-3-(2) 観測技術

 

(4-2) 関連する「建議」の項目: (建議のカタカナの項目まで、複数可)

  ㈽-1-(2)-,-1-(2)-ウ、㈽-3-(2)-

 

(4-3) 5ヵ年計画全体の目標:(計画を実施するにあたっての当初目標を記述する)

深部ボアホールを利用した地殻応力の絶対量計測技術の確立

 

 (4-45ヶ年計画の実施状況の概要と主要な成果:(5ヶ年で実施された観測・研究の内容と,それによって得られた重要な成果を述べる)

 

 この課題は名古屋大学大学院理学研究科とともに進めてきた.平成12度までに回収型インテリジェント歪み計1,2号機を改良し,3号機,5号機を作成した.3号機は従来の水平3成分・鉛直1成分に斜め2成分を加え,応力を3次元で測定できるように改良した.5号機は2号機と同じ構成ながら温度計を水晶温度計に換え精度の向上をはかった.また,内臓のプログラムを変更し,埋設時の観測時間の長期化(約2.5倍)をはかった.

 測定は防災科学技術研究所,核燃料サイクル機構との共同で行い,阿寺断層上野(深度406m),跡津川断層茂住坑道(深度390m),阿寺断層萩原(深度310m),和歌山県新宮市(深度519m)の4箇所でおこなった.特に和歌山県新宮市では本実験の最大深度での測定である.従来の応力解放法では,歪計の孔底での設置,水中でのセメンティング,深い位置でのオーバーコアリングといった技術的問題のためせいぜい深さ100mまでの測定であったが,ワイヤレス化等により,これらの技術的な問題を解決し深度500mでの応力測定が可能となった.また,インテリジェント型歪計を用いるとオーバーコアリング後歪計を孔井内に降下させることによる水圧を利用した感度検定の実施が可能となり,近似手法であるが,比較的容易に応力値を求めることができるようになった.

 平成13年以降,担当者の定年退官により本課題は継続ができないため,地震研究所が保有していたインテリジェント型歪計は名古屋大学大学院理学研究科移管され名古屋大学で研究が継続された.詳細は名古屋大学の報告に掲載されているが,1000メートル程度までの計測が可能となりつつある.また,ワイヤレス化に引き続き開発されたカップラーは非回収型ひずみ計のワイヤレス化や埋設したままのデータ回収,さらに計測系への充電など,深部ボアホール利用の高度化の道を開拓している.

 本課題の趣旨である地殻応力の絶対量測定技術開発については,地震研究所の課題番号0133(精密弾性波計測技術の高度化研究)のなかで実施されており,さまざまな問題が指摘されている水圧破砕法にかわる乾式破砕プローブの開発研究が実施されている.

 

(4-55ヶ年で得られた成果の地震予知研究における位置づけ:(得られた成果が地震予知研究においてどのような意味を持つのかを述べる)

 

 地殻応力測定は,現在の応力状態が地震発生サイクルのどのあたりに位置するか評価するため,あるいは震源ソースパラメータ解析で推定されるストレスドロップがどの程度正確なのか?ずるずるすべり領域やアスペリティ領域では,どの程度の割合でストレスが蓄積されるのか?さらにその周辺への波及はどうなっているのか?日本列島のひずみ集中帯は,どの程度の量まで非弾性的ひずみ集中で,どの程度まで応力集中なのか?その地下深部を含めた力の伝達はどのようになっているのか?さまざまな疑問に答えるための重要な手がかりを与えるものと期待される.予知研究で主力であった水圧破砕法の問題点が明らかになっているので,信頼性の高い測定法の確立が急務である.

 

(4-6)当初目標に対する到達度と今後の展望:(当初設定した目標に対してどの程度到達できたのかを総括し,平成16年度以降の計画についての展望を述べる)

 

 当初計画した回収型インテリジェント歪計を利用した応力解放法については,すでに1000m近いボアホールでの測定が可能となった.地震研究所実施担当者が退職したため,平成16年以降は,当初の課題に書かれている回収型インテリジェント歪計を利用した手法を主体的に取り組むことは簡単ではないが,名古屋大学と共同で研究を実施することにより貢献できる.また,すでに課題番号0133で実施しているように,乾式破砕法のような新たな測定手法の開発研究により,本来の目的,すなわち予知研究で利用可能な程度の高い信頼性をもった地殻応力測定手法の開発研究を実施する計画である.

 

 

(4-7) 共同研究の有無:(機関・グループとの共同研究の場合は、その旨明記し、さらに観測の場合には、実施時期と場所、参加人数概数も明記する)

 

 名古屋大学理学研究科

 

(5) この研究によって得られた成果を公表した文献のリスト

 

(5-1)過去5年間に発表された主要論文(5編程度以内):

(出版された論文のリストを科研費の申請書に倣って書く。「著者名、論文名、学協会誌名、巻()、最初と最後のページ、発表年(西暦)」。著者名が多数にわたる場合は、主な著者を数名記入し以下を省略。主要な論文のみを示す)

 

佐野 修・伊藤久男・水田義明,地殻応力測定法の信頼性を損なう要因について,月刊地球,26139552004

石井 紘・山内常生・松本滋夫・池田隆司, インテリジェント回収型歪計を用いた超深度ボアホール孔における歪観測とオーバーコアによる初期応力測定, 物理探査学会第102回学術講演会講演論文集, 109-113, 2000

松本滋夫・石井 紘・山内常生・窪田 亮, 超深度ボーリング孔における初期応力測定のためのオーバーコアリングシステムの開発, 東京大学地震研究所技術報告, 6,1-9, 2000

松本滋夫・石井 紘・山内常生・窪田 , 超深度ボーリング孔における初期応力測定のためのオーバーコアリングシステムと方法について, 物理探査学会第102回学術講演会講演論文集, 394-397, 2000

山内常生・石井 紘・松本滋夫, 超深度ボアホールにおける初期応力測定のためのインテリジェント回収型歪計の開発, 物理探査学会第102回学術講演会講演論文集,104-108, 2000.

 

(5-2)平成15年度に公表された論文・報告:(出版された論文、学会大会等での発表、会議報告等を記述。フォーマットは(5-1)と同様。なお,(5-1)に示されている論文はここでは記入不要)

 

 この課題番号は平成13年度で終了した.

 

(6) この課題の実施担当連絡者:

氏名:佐野修

電話:0358415892

FAX0358418265

E-mailosano@eri.u-tokyo.ac.jp