(1)課題番号:0131
(2)実施機関名:地震研究所
(3) 課題名:精密制御震源(アクロス)
(4) 本課題の5ヵ年計画の概要とその成果(以下の4-1〜4-3について答える)
(4-1) 「地震予知のための新たな観測研究計画の推進について」(以下、建議)の項目:
(数字の項目まで、最も関連の深い項目を記入する)
III.計画の内容 3.地殻活動シミュレーション手法と観測技術の開発 (2) 観測技術
(4-2) 関連する「建議」の項目: (建議のカタカナの項目まで、複数可)
III.計画の内容 のうち
3.地殻活動シミュレーション手法と観測技術の開発
(2) 観測技術 ウ. 地殻深部における計測技術の開発と高度化
1.地震発生に至る地殻活動解明のための観測研究の推進 (3) 直前過程における地殻活動イ. 前駆現象検出のための試験観測
(4-3) 5ヵ年計画全体の目標:(計画を実施するにあたっての当初目標を記述する)
・精密人工震源小型試作機(やよい1号)の製作と室内試験(完了)
・実証試験用機(やよい2号)設計製作とフィールド展開(稼動中)
・試験サイト(山梨県東部地震域北方25kmで深度600mの地下坑道)の振動環境計測(完了)
・弾性波シミュレーションによる性能評価(完了)
・坑道内光ケーブルを利用した直達波による速度トモグラフィの実施(実施中)
・岩石標本の室内散乱実験(中断中)
・坑道内光ケーブルを利用した直達波による速度トモグラフィ(実施中)
・波動トモグラフィのインバージョン手法の開発(継続中)
・実証試験用機(やよい3号)のフィールド展開(製作完了。設置を検討中)
(4-4)5ヶ年計画の実施状況の概要と主要な成果:
(5ヶ年で実施された観測・研究の内容と,それによって得られた重要な成果を述べる)
精密制御震源の実証モデルを完成し,地下サイトに展開し,波動の放射性能(振幅および周波数精度)の検証を完了した。
(4-5)5ヶ年で得られた成果の地震予知研究における位置づけ:
(得られた成果が地震予知研究においてどのような意味を持つのかを述べる)
アクロスは,非弾性変形を高分解能で検出することを狙っているので,地震予知研究協議会の「平成12年度全体計画骨子の補足説明」の全体計画に関連するところは多い。今期はテストサイトでの試験までに留まったが,フィールドを意識した研究開発が必要になっている。
“(1)-1.広域応力場の不均質性では,実験から得られるミクロな変形特性と,GPS等から得られるマクロな変形特性との橋渡しを行うために,不均質構造の推定によってクラックや地殻流体等の分布を調べることが重要となる”.そこでアクロスによりクラックや地殻流体等の分布の信号(散乱情報)を取得することを狙う。
“(1)-3-1. 地殻・最上部マントルの変形特性では,下部地殻の変形機構として,塑性流動や粘弾性変形などが考えられている”こと,“(1)-3-2.
下部地殻の変形の集中度では,媒質の変形の集中度の推定には,地震波の反射・散乱などの解析が有効である.地震波反射面は重要なターゲットである.反射面が単なるインピーダンスコントラストではなく,実際にすべりが起こっている面かどうか明らかにすることも重要”であり,“(4)-3-1. 下部地殻では下部地殻の変形特性に対する地殻流体の役割を,観測や実験から明らかにすることが重要”であり,“(4)-3-2. 上部地殻では,上部地殻における地殻流体の空間分布と,応力場や歪速度場,あるいは地震活動との関係を明らかにすることが重要”である.そこでこれらに関連するアクロス信号を取得し解析することをめざす。
“(3)-2-2. 変形特性の空間分布では,歪集中帯とそうでない地域の変形特性に違いがあるかを評価し,もし相違があるならば,その原因を推定することが重要である.このためには,応力の空間分布,地震波速度・減衰構造や散乱体分布,比抵抗構造等と歪速度分布の対応関係を明らかにすることが有効”であり,また“(4)-1. 地殻流体の実体の解明では,地殻流体の分布や挙動はほとんど分かっていないので,重力・地震・電磁気・地殻変動など多様な手法を総合して,深部の流体の実体を捉える手法の開発が必要である.特に重要なフィールドは,群発地震に先立つ前兆的地殻変動が観測されている伊東沖である.地殻流体の挙動の実測を試み,群発地震とその前兆的変動の生成を説明できる数値モデルを開発することが重要である”.さらに“(4)-2. 断層面の破壊強度に対する地殻流体の役割では,断層帯における高圧水や,深部からの熱水の移動による化学反応などが重要なテーマであり,観測・実験・シミュレーションなどにより,よく分かっていない地殻流体と地震発生の関係の解明を試みることが重要”であり,“ (5)-4. 応力・強度分布推定法の開発では,応力分布推定のためには,応力測定や微小地震の応力降下量の研究が重要”であるが,これらはアクロスと間接計測技法(高度の逆解析を観測に組み込む手法)で検出できる可能性がある。
(4-6)当初目標に対する到達度と今後の展望:(当初設定した目標に対してどの程度到達できたのかを総括し,平成16年度以降の計画についての展望を述べる)
射程600m程度の高分解能トモグラフィについては,装置の整備が完了し,実験を継続中である。
フェイズドアレイについては,高機能型震源は完成したものの,設置費用(電源取得など含む)がなく対応を検討中である。
(4-7) 共同研究の有無:(機関・グループとの共同研究の場合は、その旨明記し、さらに観測の場合には、実施時期と場所、参加人数概数も明記する)
平成15年度地震研究所の一般共同研究「ACROSS開発の中間総括とさらに展開すべき研究課題の整理」(代表者:熊澤峰夫、担当教官:東原紘道)の研究集会を,10月21日 〜22日に地震研究所において以下のプログラムで実施した:
(1)これまでのアクロスの開発研究の状況と問題点のレビュー
1-1)理論体系:sinusoidal approaches のレビュー
1-2)技術体系:原状と展望、弾性波、電磁波
1-3)個別技術:送信装置、送信信号論、データロガがー、データ処理、
1-4)データ解析:伝達関数とそのモデル、順逆問題。
(2)アクロスによる監視観測の原状と現時点における計画案紹介
2-1)定常送信受信観測:淡路-淡路
2-2)定常送信受信観測:東濃-東濃、東濃-Hi-net
2-3)気象庁の研究計画
(3)関連分野におけるsinusoidal approachの原状紹介
3-1)人工構造物試験
3-2)物理探査
3-3)計測領域:周波数特性検定;地震計と誘電物性
(4)外国事情と国際状況紹介
4-1)ロシア=パワフルバイブレーター
4-2)アメリカ=バイブロサイス
4-3)中国
4-4)IUGG/IASPEI:iam(International and Interdisciplinary working group for AM)の活動プラン
(5)日本列島3次元地下状態監視システムの構築について
(6)国内の態勢:JCEAM(Japanese Consortium of the Earth’s Active Monitoring)の活動プラン
これにより今後の研究の協力体制が飛躍的に整備された。
(5) この研究によって得られた成果を公表した文献のリスト
(5-1)過去5年間に発表された主要論文(5編程度以内):
Higashihara,H., High-resolution seismic tomography based on coherent wave technologies, 15th ASCE Engineering Mechanics Conference,
佐伯昌之,曽維健,東原紘道,調和弾性波トモグラフィにおける周波数精度と分解能の 定量的分析
応用力学論文集 Vol.4,2001,pp.467-474
Higashihara,H., A New High-Resolution Underground Tomography based on Coherent Seismic Wave, 1st Albert Caquot International Conference, Paris, 2001,10.3-5,
100-107, 2001.
佐伯昌之,東原紘道,精密制御人工震源の波動場励起力に関する理論的研究,応用力学 論文集 Vol.3, 2000,pp.679-686
Higashihara,H. and Yamaoka,K. , Development of a new
coherent seismic wave tomography
method, Fourteenth Engineering Mechanics Conference of ASCE, The University of
Texas at Austin, May 21-24, 2000, CD-ROM, 2000.
(5-2)平成15年度に公表された論文・報告:
M. Saeki, H. HIGASHIHARA and Y. OTAKE, Deep deployment
of new ACROSS seismic tomography instruments and its performance assessment,
accepted for 16th ASCE Engineering Mechanics Conference, July 2003,
佐伯昌之,東原紘道,大竹雄次, 精密制御震源の大深度地下展開とその性能検証, 応用力学論文集, 6, 731-738, 2003.
(6) この課題の実施担当連絡者:
氏名:大竹雄次
電話:03-5841-5743
FAX:03-5841-5693
E-mail:otake@eri.u-tokyo.ac.jp