(1) 課題番号:0306

(2) 実施機関名:北海道大学・大学院理学研究科

(3) 課題名:北海道積丹半島北西沖の地殻構造の推定

 

(4) 本課題の5ヵ年計画の概要とその成果

(4-1) 「地震予知のための新たな観測研究計画の推進について」(以下、建議)の項目:

1.(1) 定常的な広域地殻活動

(4-2) 関連する「建議」の項目:1.(2)ウ・エ

(4-3) 5ヵ年計画全体の目標:

平成10年度に北海道積丹半島北西沖において行った地殻構造探査のデータを解析し、速度構造を推定する。

 

(4-4)5ヶ年計画の実施状況の概要と主要な成果:

1に示す奥尻海嶺北端部(積丹半島北西沖)において、平成10年にエアガンと海底地震計を用いた地下構造探査を行った。

観測を行った海域は、

(1) 日本海東縁部において海溝に似た構造が見られる海域の1つ

(2) 1940年積丹半島沖地震の震源域を含み、1983年日本海中部地震、1993年北海道南西沖地震の北側の延長

(3) 以北では浅い地震が少なくなるという地震活動のギャップがある

といった特徴・現象が見られる領域である。(1)(2)、負の重力異常などは、当海域にプレート境界(収束境界)が存在する可能性を示唆している。

  そこで、(1)奥尻海嶺北端部がユーラシアプレート(アムールプレート)と北米プレート(オホーツクプレート)との境界であるか、(2)浅い地震が少ないことと地下構造の関係、を明らかにすることを目的として、奥尻海嶺北端部で地下構造探査を行った。

  観測は、平成1010月9日から22日にかけて、北海道大学理学研究科による傭船で行った。測線は、奥尻海嶺に直交する Line 1 (測線長 166km)と平行な Line 2 (125km)Line 3(114km)からなり、測線上に26台の海底地震計を10-20km間隔で設置した。制御震源として容量17リットルのエアガンを2基用い、船速5ノットで60(150m)間隔で合計2591回発震した。各地震計においては、良好な記録を得ることができた。

  解析の結果、各測線についてP波速度構造が得られた。ただし、Line 1については構造が複雑で、2次元構造の仮定の元ではすべての走時を満足できるような構造を得ることはできなかった。これは3次元の効果が強く現れたためと考えられる。図2と図3にLine2Line3についての結果をそれぞれ示す。

また、Line 1Line 2の交点にある海底地震計の記録中の後続波をセンブランス法で解析することによって、観測点から南西に約5700mの地点の海面からの深さ約9700m付近に散乱体が推定された。

 

(4-5)5ヶ年で得られた成果の地震予知研究における位置づけ:

   北海道積丹半島北西沖の海域においてP波速度構造が得られた。現時点では得られた結果にまだ改善の余地があるものの、今後の地震データ解析のための基礎となる構造が得られたと言える。

 

(4-6)当初目標に対する到達度と今後の展望:

  北海道積丹半島北西沖の3本の測線について速度構造が得られたことで、一応目標は達成された。ただし、奥尻海嶺に直交する東西の長い測線については、構造が複雑で3次元の効果が強く現れたため、得られた結果にはまだ改善が必要である。したがって、地下構造と地震活動やテクトニクスとの関連について議論するには至らなかった。今後は、その他の観測結果等と比較・検討を行いながら得られた結果の改善を行い、また、3次元的な構造探査を行うことにより、当該地域のテクトニクスを明らかにしていきたい。

 

(4-7) 共同研究の有無:

東北大学との共同研究。

 

(5) この研究によって得られた成果を公表した文献のリスト

(5-1)過去5年間に発表された主要論文(5編程度以内):

秋山 諭、センブランス法を用いた積丹半島北西沖の散乱体の位置の推定、北海道大学卒業論文、1999年。

村井 芳夫・秋山 諭・山品 匡史・桑野亜佐子・島村英紀、デジタル海底地震計とエアガンを用いた散乱体分布の推定、1999年地球惑星科学関連学会合同大会、Sa-0021999

山品 匡史・村井 芳夫・渡邊 智毅 他、エアガン−海底地震計による奥尻海嶺北部の地震波速度構造、1999年度 日本地震学会 秋季大会 講演予稿集、P0901999

 

(5-2)平成15年度に公表された論文・報告:

 

(6) この課題の実施担当連絡者:

氏名:村井芳夫

電話:011-706-3553

FAX011-706-3553

E-mailmurai@eos.hokudai.ac.jp

 

 

(図の説明)

1 調査海域および探査測線

太線が探査測線、〇が海底地震計を示す。等深線間隔は200m

2 Line 2 直下のP波速度構造

3 Line 3 直下のP波速度構造