(1)課題番号:1003

(2)実施機関名:鳥取大学工学部

(3) 課題名:島根県東部空白域周辺の地震活動及び構造調査

(4) 本課題の5ヵ年計画の概要とその成果

 (4-1) 「地震予知のための新たな観測研究計画の推進について」(以下、建議)の項目:1.(2)

 (4-2) 関連する「建議」の項目:ウ

 (4-3) 5ヵ年計画全体の目標:

山陰地域の島根県東部は日本海沿岸に沿って分布する活構造地域の中で、特異な地域として位置付けられ、時空間的に地震活動の空白域であった。この地域全体の地体構造・地震活動を明らかにすることは西南日本の地震活動を知る上で重要な地域である。

 山陰地方の過去の地震活動は、880年の出雲地震から1100年以上空白域であった島根県東部空白域であった地域に、2000年鳥取県西部地震(M7.3)が発生した。被害地震は1872年浜田地震、1927年北丹後地震、1942年鳥取地震と時空間的にほぼ等しく分布している。大地震が想定される活断層がなく、微小地震分布は沿岸に沿って線状に分布している。これらは火山分布、温泉分布などと良い一致が見られている。島根県東部の地震空白域とその周辺の地震活動の特性、地下構造を観測研究し、山陰地域の内陸地震発生メカニズムを明らかにし、空白域を検証する。

 

(4-4)5ヶ年計画の実施状況の概要と主要な成果:

山陰地域の島根県東部は日本海沿岸に沿って分布する活構造地域の中で、大地震が発生してから1000年以上が経過した時空間的な、地震活動の空白域であった(図1)。最近の活動では、山陰地域の地震活動が整列し、鳥取県西部地域に活動が集中した(図2)。そして、2000年鳥取県西部地震(M7.3)が106日に発生し、内陸大地震について観測研究が行われ、多くの成果が見られた。そして、山陰地域の第四紀火山との関連など地下構造との関連が明らかになった。

2000年鳥取県西部地震(2000106日、M7.3

 鳥取県西部の西伯郡、日野郡、米子市、境港市及び島根県東部、岡山県北部に大きな被害を出している。しかし、亡くなった人がない、火災の発生が0件、激しく揺れたのに全壊家屋が少ないなど、特筆すべきことである。鳥取県では、7月に米子市で災害訓練を実施していたので、災害対応・対策が迅速・適切に実行された。

本震は西伯町の地下10kmの所を震源として、震源断層は北北西南南東の走行で、約20kmの長さの左横ずれ断層を示している(図3)。余震活動は、特異な分布を示している。多くの余震は震源断層に沿った細長い帯状の地域に集中し、本震の震源より南側(西伯町から日野町)では線状配列を示しているが、北側(西伯町から島根県伯太町・安来市)では余震分布が複雑で箒状を示している。南西に約10km離れた日南横田町ではM5.5の地震が発生し、北東に約15km離れた大山の東付近では微小地震が頻発した。東西50km以上の地域で地震活動が活発になった。本震と前駆的地震活動の関係、本震のすべり分布と地震分布、地下構造と震源断層の関係、など震源断層について多くの知見が得られた。

 

(4-5)5ヶ年で得られた成果の地震予知研究における位置づけ:

 この内陸大地震は、活断層が発達していない地域で、歪の極端な集中がなかった地域である。これは内陸地震予知研究に新たな研究課題を提供している。1995年兵庫県南部地震以降、整備された高感度地震観測、強震観測、GPS観測などが、本震のデータを記録し、内陸地震発生メカニズムのモデル化を行っている。また、地震直後から、多くの分野で稠密観測が実施され、震源断層周辺の物理的状態、時間変化を詳細に解析することが出来た。

特に、鳥取大学では、地震活動解析と比抵抗構造解析に貢献している。震源断層形成には地殻上部・下部の構造が関連があるとして、山陰地方全体を視野において、観測研究をしている。

 

 (4-6)当初目標に対する到達度と今後の展望:

 山陰地方、島根県東部空白域周辺の観測研究は2000年鳥取県西部地震前後の状況を観測することができ、多くの成果を挙げることができた。山陰地方の地下構造を観測研究し、沿岸沿った地震分布、火山分布について、比抵抗構造との関連で、地震発生メカニズムモデルを確立し、山陰地方全域での検証を行う。また、島根県東部空白域についてMT観測を実施し、地殻上部・下部の比抵抗構造を観測研究し、空白域の検証を行う。

 

(4-7) 共同研究の有無:

 全国の大学・研究機関と地震活動・地殻構造・比抵抗構造の共同観測研究を実施している。

 

 (5) この研究によって得られた成果を公表した文献のリスト

 

(5-1)過去5年間に発表された主要論文(5編程度以内):

西田良平・金本宏司・野口竜也・小山真紀・太田 裕、2002年鳥取県西部地震と境港市のアンケート調査、東濃地震科学研究報告 Seq.No.9 地震防災分野-地域防災対応力調査特集-20023

Takuo ShibutaniSetsuro NakaoRyohei NishidaFumiaki TakeuchiKunihiko Watanabeand Yasuhiro Umeda Swarm-like seismic activity in 1989, 1990 and 1997 preceding the 2000 Tottori-ken Seibu EarthquakeEarth Planets Space ,54,831-845,july 3,2002

西田良平・寺田一樹・吉川大智・野口竜也・金本宏司・岡本拓夫、2000年鳥取県西部地震と弓ヶ浜半島の地下構造、物理探査、第55巻第6号、2002pp473-484

 

(5-2)平成15年度に公表された論文・報告:

 

(6) この課題の実施担当連絡者:

氏名:西田良平

電話:0857-31-5641

FAX0857-28-7899

E-mailnishidar@cv.tottori-u.ac.jp

 


図1 山陰地方の大地震:

出雲地震(880年、M7.0)、正徳地震(1711年、M6.3)、宝永地震(1712M6.5)浜田地震(1872年、M7.1)、北丹後地震(1927年、M7.3)、北但馬地震(1925年、M6.8

鳥取地震(19439月、M7.2)、鳥取沖地震(19433月、M6.1

 

 

図4 2000年鳥取県西部地震までの地震活動の震源断層の走行(左横ずれ断層型)

 

 


 

 

図1 2000年鳥取県西部地震の余震分布と市町村区分