地震予知研究協議会企画部準備会 (第3回) 議事抄録
日時:1999年8月17日 (火) 13:30〜18:00
場所:東京大学地震研究所
第3会議室
出席者:平田
直 (委員長)、本谷 義信、松澤 暢、岩崎 貴哉、菊地 正幸、
山岡
耕春、梅田 康弘、清水 洋 (以上委員)、大形 尚子 (事務局)
1. 報告
平田委員長より下記の報告があった。
a) 企画部準備会に対する地震研のサポートとして、部屋 (325号室) と PC の提供および事務局のための非常勤職員
(大形 尚子) の雇用がなされた。
b) 企画部の公募が行なわれており、現在のところ数人の応募がある。
c) 企画部準備会で行なったアンケートについて、項目一覧表については各機関に戻し、アンケートの内容や他の資料を
web等で企画部準備会委員が閲覧できるように検討したい。
2. 議事
2.1 各部会準備会の活動状況と平成11年度計画について
各部会準備会の活動状況の報告と平成11年度計画の説明、およびそれに基づく議論が行なわれた。
◎ 「定常的な広域地殻活動」(岩崎委員)
メールによる議論の結果、アンケートの結果に対して、3点の基準を設けて、計画に優先順位をつけた。また主要な柱として3課題を掲げた。ここでは、各大学の計画に、全体としてのベクトルを持たせることに留意した。
これに対して、成果を出すための時間スケールとしては1年毎に進展がわかるようにすることが望ましい、研究の目的・方向性をきちんと示すことが重要である、データ公開も含めて広範な研究者が参加できることが望ましい、等の議論がなされた。
◎ 「準備過程における地殻活動」(松澤委員)
メールでの議論と2回の会合により、3本柱を立てて、各提案をそこに分類した。
各テストフィールドの選定基準には、いろいろな考え方があるため、ここでは優先順位をつけることは見おくった。
これに対して、各選定基準毎にでも優先順位をつけたほうが良い、なんらかの公平な基準を作ることが重要である、平成11年度の実績を見て優先順位をつけるという方針もあり得る、テストフィールドとしては他の建議項目の研究と共通するフィールドを選定したほうが効率が良い、等の議論がなされた。
◎ 「直前過程における地殻変動」(本谷委員)
メールでの議論と1回の会合の結果をもとに、4本の柱をたてた。提案数も少ないので、特に優先順位をつけず、相互の関連づけを行なうことを重視した。また、過去の地震の前駆的現象の見直しも重要であると考えている。
これに対し、「直前過程」と「準備過程」の境界をどこに置くか、前駆的現象は破壊核に起因する局所的な現象なのか震源域全体の現象なのか、破壊核はそもそも構造探査的手法で検知できる (構造に変化が現われる) のか、「プレスリップ」という用語の定義が人によって異なる、等の議論が行なわれ、「直前過程」でどのような現象が生じていると考えられているのか、いろいろな研究者のモデルとその根拠を整理する必要があるとの指摘がなされた。また、フィールドでの計画の提案が少ないため、そのような提案を促すようにすることが重要であるとの指摘がなされた。
◎ 「震源過程と強震動」(菊地委員)
提出されている課題は、地震研と防災研の2つだけであり、もっと多くの提案を促す必要がある。このうち防災研から出されている「地震環境評価」という用語が、この課題でやるべきことを、一言で良くあらわしている。
◎ 「地殻活動監視システム」(清水委員)
会合を1回開いて議論した。平成11年度に実施される計画は、東大理の地球化学関連のみであるが、「準備過程」とされているテーマについても、「地殻活動監視システム」に関係しそうなものがあるので調整・連携が必要である。大学としては、データの流通をどうするかが重要であり、これについて広く議論しなければならない。また、モニタリングに何のデータが必要かも良く議論していく必要がある。
◎ 「観測技術開発」(山岡委員)
提案も少ないので、ML でのみ議論している。いくつかのグループは共同で行なっているが、似たテーマなのに共同されていない部分もある。これについては、競争したほうが良いという意見もある。現時点では優先順位をつけていないが、将来的な優先順位を考えるために、できるだけ早い時期に研究集会を開く必要がある。
◎「地殻活動シミュレーション」(平田委員長)
会合を1回開き、それを元に提案をまとめた。これについては、大規模な計画が別に動いており、それとの位置づけを常に明確にしておく必要がある。また将来的には海外の同様のプロジェクトと連携していくべきである。
2.2 各提案の建議項目への分類
各大学からの提案は、それぞれの判断で建議の項目に分類されているため、特に「定常的」と「準備過程」の分類で整合性がとれない部分がある。このため、基準を設けて分類しなおした。ここでは、建議の精神とこれまでの企画部準備会の議論を踏まえ下記の基準を採用した。
a) 広域の構造やカップリングの空間変化を主眼とした計画は「定常的」の項目に分類する。
b) 時間変化を主眼とした計画は「準備過程」に分類する。
c) 時間・空間両方の変化に注目した計画については、どちらか一方のより近い項目に分類するが、もう一方の項目においても参照する。
d) 断層近傍の比抵抗構造については、「準備過程」の項目に入れるが「定常的」の項目でも参照する。ただし、ネットワークMT
による大規模比抵抗構造については「定常的」の項目に分類する。
2.3. 天文台の地震予知事業からの撤退について
天文台が今年度から地震予知事業から撤退することになったため、その事業を引き継ぐかどうか、また引き継ぐとすればどのようにするか考えなければならない旨の説明が平田委員長からなされた。これを受けて松澤委員より、東北大としては、天文台の壕の観測を放棄することは地震予知事業にとって大きな損失であると考え、観測を引きつぐ用意があるが、そのやり方についてはまだ白紙状態である旨の報告がなされた。
3. 今後の予定
今回の議論を踏まえて、各部会準備会の計画を改訂して、8月26日の地震予知研究協議会の前までに提出すること、各部会準備会の会合を今年度に何回開催する予定か事務局に連絡することとした。次回の会議の日程は、8月26日の協議会後に調整する。今年度中に残された課題としては、平成12年度の実施計画の取りまとめと平成13年度の計画の策定、平成11年度の成果のとりまとめ、および企画部と計画推進部会の内規の策定がある。