3.5.11 2015年ネパール・ゴルカ地震 (Mw 7.8) 震源域中央部における稠密余震観測

2015年4月25日に発生したネパール・ゴルカ地震(Mw7.9)は、インド-オーストラリアプレートとユーラシアプレートの境界で発生した逆断層型の地震である。ゴルカ地震の震源断層の形状を明らかにすることは、衝突帯のテクトニクスを理解する上で重要である。そこで、2015年以降、山形大学、ネパール科学技術院(Nepal Academy of Science and Technology)、トリブバン大学との共同研究を進めている。2016年は、ゴルカ地震余震域の中央部から最大余震(Mw7.3)の震源を含む余震域東部にかけての地域と、余震域西部に位置する本震の震源近傍における稠密余震観測計画を進めるとともに、2015年にゴルカ地震震源域中央部を横切る稠密余震観測測線で取得したデータの解析を進めた。トモグラフィー解析によって得られた結果からは、北に傾斜する余震分布が深さ5-15㎞の範囲で確認できた。 観測された余震の波形記録からは、地殻深部からの反射波と考えられる後続波も観測されている。そこで、トモグラフィー解析で得られた速度構造を使用し、観測された反射波走時を説明できる反射面の形状把握を行った。その結果、Main Frontal Thrust(MFT)の北側60-90㎞、深さ9-15kmに北傾斜の2つ反射面の存在が推定され、浅い方の反射面はプレート境界、深い方の反射面はインドプレート内に位置すると解釈した。本研究で推定されたプレート境界面の傾斜は、MFTの北側80㎞付近までが約5度、それより北側では約13度であり、これまでに地表地質などを拘束条件として提案されている地殻構造断面図 (例えば、Bollinger et al., 2004)と比較すると、プレート境界面は浅部に位置し、屈曲した後の傾きは緩やかであることが明らかになった。