3.12.4 高密度強震観測データベース

(1) 首都圏強震動総合ネットワークSK-net の構築と運用

首都圏強震動総合ネットワーク(SK-net)は,首都圏の10 都県の14 観測網から,合計932 観測点(図3.12.4)の強震波形データを収集するシステムである.これらの観測網のデータ収集方式やフォーマットはそれぞれ異なるので,一旦共通フォーマットに変換してデータベース化し,加速度,速度,変位を求めて,最大値,SI (Spectral Intensity) 値,速度応答スペクトルなどとともにSK-netウエブサイトで一般に公開している.オリジナルの波形データは,全国の大学等の研究者の利用を可能にしており,2016年度は54名の利用申請を受け付けた.データは,1999年1月から2017年3月までに収集されたデータを順次利用可能にしている.

自治体の震度計の更新により収集システムも更新が必要となり,5県については,新しい波形収集装置を開発してオンライン収集を継続し,残りの県についてもオフラインでデータ提供して頂いている.最近では,横浜市が約150点の強震観測点を42点の震度観測点に更新したことから,サイトを介したオンライン収集方式に変更した.

東北地方太平洋沖地震については,本震や余震の波形データ量が膨大なため,一部の県でオンライン収集が困難な事態が発生した.現地の震度計からのデータ回収を実施してデータベースに格納した結果,783の観測点からの波形データがホームページで公開されている.

SK-netの開発当初から最近までの,首都圏の10 都県の14 観測網からの波形データ収集の現状については,2014年度末に地震研究所技術報告2014に詳細を報告し,2015年度の地震学会秋季大会においてその概要を発表した.

(2) IT 強震計の開発

IT強震計は,最近のIT技術を利用して,従来の強震計より高密度な観測を可能にすることを目的として開発された.震度0~1程度の地震動から観測可能で,身近な場所の日頃の弱い揺れを観測して地域の地盤や建物の特徴を探り効果的な防災対策にも活用可能である.

 本センターでは,IT 強震計のプロトタイプを開発し,地震研究所の各建物内に設置し,弱い地震時の記録から,それぞれの建物の揺れの特徴をとらえたり,耐震補強前後の振動特性の変化をとらえたり,東北地方太平洋沖地震の前後の建物剛性の変化をとらえることなどに成功している.2009年度より情報学環総合防災情報研究センターと共同で学内の建物にも設置を開始し,2011年より以下のホームページ(学内限定)IT強震計東大プロジェクトにおいて有感地震時の観測データを公開して利用可能にしている.さらに,2013年度からは,3キャンパスの9棟に設置された.各キャンパスの地盤と建物の揺れを携帯電話などにメール配信する「学内地震速報」メールを提供している.2016年度は引き続き,これらシステムの内容の充実を行っている.なおIT強震計の産学連携共同研究組織「 IT強震計コンソーシアム(代表は,2015年9月から災害部門の楠浩一准教授に交代)」の運営サポートも行っている.