3.10.2 地震発生サイクルシミュレーション

 円形アスペリティを仮定し,Nagata et al. (2012)により修正された摩擦則に基づいて地震トリガーに関する数値シミュレーションを行なった.地震サイクルのある時点で,サイン波で変化する応力擾乱を与えると微小滑りが起こり,強度が下がる(滑り弱化).擾乱の振幅が大きくなるにつれ,滑り速度の変化が大きくなり,地震滑りに至るまでの時間が短くなる (図 3.10.1(a)赤丸).応力擾乱の周波数依存性はほとんど見られなかった.静的応力も同時に増加する場合は,図 3.10.1(a)の橙,緑丸が示すように,より小さな動的応力変化でトリガーされる.また,たとえ静的応力変化が負であっても,動的応力変化が大きければトリガーされることがあった(黒丸).菱形のプロットは応力変動が起こっている最中に地震が発生する場合で,2016年熊本地震の際にも観測された,地震波が通過中にトリガーされる地震に対応する.

 図 3.10.1(a),(b)に地震滑りに至るまでの時間と応力変化量との関係を示す.静的応力変化の場合は,動的応力変化の場合より小さな応力変化量でトリガーされており,応力変化量の大小だけでトリガー効果を見積もることはできないことがわかる.一方,図 3.10.1 (c)に示すように地震滑りに至るまでの時間とアスペリティの滑り速度の増加量との関係は動的と静的の場合でほぼ同じである.本研究では,ある動的応力変化に対し,トリガー効果が等価な静的応力変化量を評価した.

[図 3.10.1]