3.4.4 史料分析等に基づく古地震・歴史地震の評価

(1) 史料分析に基づいた歴史地震の評価

『九州軍記』など後世の編纂史料に書かれた被害記述などから明応七年八月廿五日の明応東海地震に先行する明応南海地震,あるいは日向灘の大地震と考えられてきた地震について,京都・奈良に存在する同時代一級史料である『方丈記』『平家物語』『源平盛衰記』『太平記』の分析から,後世の編纂史料の信憑性は非常に低く,軍記物語を盛り上げるための創作であると判断され,この地震は存在しないことを示した.

(2) 地震直後に行われたアンケート調査資料の再検討による過去の地震の震度評価

1943年鳥取地震(M7.2)から1988年東京都東部の地震(M5.8)までの55地震について,東京大学地震研究所の河角広,佐藤泰夫,茅野一郎らを中心に,震度,振動方向,地鳴りなどに関する通信アンケート調査が行われてきた.1944年東南海地震,1945年三河地震の発生直後に地震研究所により行われたアンケート調査資料(図3.4.4)を再検討することによって,震度が大きく被害が生じた地域だけでなく,被害に至らなかった地域についての地震随伴現象や体感などの記録に基づいて,広域の震度・強震動分布の特徴と被害の様相を詳細に調べた.

[図 3.4.4] 1944年東南海地震の通信アンケート調査票の例.