3.3.3 浅部マグマ活動に関する研究

浅部マグマ活動に関する研究では,マグマ活動の実体を明らかにすることを目標に,含水量測定を中心とした火山噴出物の解析に取り組んでいる.マグマ中の揮発性成分量は火山噴火のポテンシャルとして重要であり,巨大噴火に到る準備過程でのマグマ中の揮発性成分量変化を明らかにする意義は大きい.また,含水量を適切に評価することによって,斑晶鉱物やマグマの液組成を用いた熱力学的温度圧力計の精度向上も期待できる.

2017年度は火山噴火予知研究センター,山梨県富士山科学研究所,常葉大学,静岡大学,熊本大学等との共同研究を実施し,西之島,諏訪之瀬島,浅間山,伊豆大島,富士山,阿蘇山など,いくつかの活動的火山について,噴火前のマグマの状態を調査した.例えば,西之島については,火砕物(粒径数十μm〜1.5 mm程度)が海半球観測研究センターが海底に設置した電位磁力計の回収作業に伴い採取されたので,この提供を受けて分析し,火砕物の形状,組成,含水量等から,これが海底噴火の生産物であることを明らかにした.また,浅間山については,1783年(天明噴火)の噴出物の解析を行い,3つマグマの関与を見いだすとともに,そのうちの2つについては約950℃,約1040℃であったことを明らかにした.さらに噴火前のマグマ混合の場とタイムスケールについての検討を行い,海抜0m程度の浅い部分でマグマの混合が起こり,混合からあまり時間を経ずに噴火に至った,と考えると観察される現象が説明可能なことを示した.