3.12.6 巨大地震・津波の研究

津波データや測地データ,地震データを用いて,世界の巨大地震の断層運動の詳細や津波の発生過程について調査している. 中南米で発生した1960年チリ地震, 2015年イヤペル地震,2016年エクアドル地震,2017年メキシコ地震などについて,主に津波データから断層面上のすべり分布の推定や太平洋を横断する津波の特性の解明を行った. この他,2009年にサモア諸島で発生した地震や2016年にインド洋で発生した横ずれ断層地震について,遠地実体波及び津波波形の解析を行って津波の発生過程を調べた.津波観測点の最適化配置,津波波形の時間逆転による解析,津波波形のデータ同化の改良など,津波波形を用いる解析手法の開発をおこなった.2011年東北地方太平洋沖地震について,遠地での津波波形記録から,津波伝播時の分散性を考慮して波源の特性を調べている.

日本海の自由振動について,その特性を調べて分類したほか,日本海東縁部の断層について,モード解を用いてそれらの津波励起特性を調べた.1896年明治三陸津波について沿岸の津波高と津波波形から日本海溝付近の断層面上のすべり分布を調べ,それが2011年東北地方太平洋沖地震と相補的であったことを示した.あらたに開発した分散性津波の波線追跡法と従来の津波差分計算法を用いて,2015年に鳥島近海で発生した火山性津波地震が,海底カルデラ内部で大きな隆起現象を伴っていたことを示した..

2011年東北地方太平洋沖地震,2010年マウレ地震,2004年スマトラ・アンダマン地震の断層モデルから,実際に発生した地震のメカニズム解を受け手側の断層としてクーロン応力変化を計算し,少なくとも2011年と2004年の地震については,活発化した地震活動の多くが本震による応力変化で説明できることを統計的に示した.また,2011年東北地方太平洋沖地震前後の地震活動変化について既往研究を整理しつつ概観し,その要因について考察した.