3.10.3 相似地震

 ほぼ同じ場所で同一のすべりが再現される相似地震は,断層面のすべりの状態を示す指標として注目されている.また,地震の再来特性を考える上で重要な地震である.そこで,日本列島全域に展開されているテレメータ地震観測点で観測された地震波形記録を基に,日本列島および世界で発生している,小規模~中規模相似地震の検出を継続的に行っている.その結果,沈み込むプレートの境界で地震が発生する場所で,相似地震が多数検出された.相似地震群から推定されたすべり速度分布は,各地域のプレート間固着状態を反映した特徴を示している.また,地殻内で発生した大地震の余震活動や群発地震活動の中にも相似地震活動が見つかった.特に,2011年東北地方太平洋沖地震発生後にM6クラスの地震が発生した茨城県北部地域や千葉県銚子付近の余震活動中には多数の相似地震が発生しており,その活動は現在も継続している.相似地震群から推定されるすべり速度の時間変化は,各断層面において余効すべりが生じていることを示している.発生後1年間のすべり量は少なめに見積もっても3cm程度になる.このことは上盤側プレート内の変動もこれらの地域の地殻活動を把握する際には無視できないことを示唆している.