3.10.4 陸域機動地震観測:2011年東北地方太平洋沖地震にともなう地殻応答

 2011年東北地方太平洋沖地震の後,日本列島では大きな余効変動が観測され,それに伴い活発な地殻活動が観測されてきた.これは,プレート境界の大きな変位に対して島弧が影響を受けたことによるものである.そのため,プレート境界の変位に対しての島弧地殻の応答をみることは,日本列島の地殻活動の予測においてひじょうに重要である.プレート境界での変位に対して島弧地殻の応答を見るためには,東北日本弧の地殻・マントル構造を明らかにするとともにレオロジーモデルを構築し,得られたモデルに基づくシミュレーションを行い,そのシミュレーション結果と観測データとの比較を行うことが重要である.その際に,シミュレーション解析を行うためには,モデル化に際して島弧を横断する測線の地殻構造が明らかになっていることが必要である.そこで,地震観測においては,福島県のいわき市周辺から新潟県に抜ける測線で約1.5km間隔の臨時観測を行ってきた.また,地球電磁気学研究グループも同じ測線で比抵抗構造の研究を行ってきた.地殻の構造を知るためには,なるべく多くの物理データを合わせて検討することが重要である.そのため,地震学的解析で得られた構造と比抵抗構造との比較を行った.
 いわき周辺の地震の活動域の西側から猪苗代湖にかけての地殻浅部に高比抵抗構造が見られ,その領域は地震波の速度も高速度であることがわかった.また,いわきの地震活動域西側の地殻中部に見られた低比抵抗域は低速度であることがわかり,地震波速度構造と比抵抗構造との結果が調和的であることがわかった.