3.10.6 霧島新燃岳の2017-2018年再噴火に伴う傾斜変動

 霧島山新燃岳では,2011年に約300年ぶりの本格的なマグマ噴火が発生し,山頂火口を溶岩が埋めた.2011年9月の噴火を最後に表面的な活動は停滞していたが,無人ヘリを用いた空中磁気測量により火口内溶岩の冷却が進行している様子が観測される一方で,GNSS観測網のデータを用いた地殻変動解析によると,新燃岳北西のマグマ溜まりの膨張が間欠的に続いていた.
 2017年2月以降,新燃岳北西のマグマ溜まりの膨張が再び始まり,比較的速い速度で膨張が続いた後,2017年10月11日に噴火が発生した.噴火活動は断続的な小規模噴火から爆発的な噴火に移行し,火口内へ新たに流出した溶岩は2011年の活動で火口を満たしていた溶岩を覆った.更に,火口から溢れだした溶岩は北西斜面を200 mほど流下した.その後,噴煙柱の高さが3000 mを超える噴火が頻発し,6月下旬まで爆発的噴火の発生が続いた.
 新燃岳火口近傍に我々が展開する広帯域地震観測網のデータを解析したところ,噴火の2日前には火口直下浅部への流体移動を示唆する傾斜変動(図3.10.1)と微動が観測されていた.また,それぞれの爆発的噴火の20-30分前には山体がゆっくり膨らみ,噴火の数分から10分ほど前からわずかに収縮した後に噴火に至る様子が観測された.これらの傾斜変動は火口から遠い観測点では見えず近傍観測点のみで検出された.このことから,噴火に先行する山体内の現象を検出する上で火口近傍観測が有効な手段であることが示されたと言える.