3.3.6 地球ダイナミクス:水と固体地球の相互作用

太陽系の岩石惑星の中でも、地球は、海と陸、活発な地震・火山活動、プレート運動と大陸移動、地球磁場を有し、生命を宿す「にぎやかな惑星」である。なぜ兄弟惑星である火星や金星と異なりこれほど活発で多様性に富むのか、その仕組み・鍵の一つは水にあると考えている。物質科学系研究部門・岩森研究室では、これらのユニークな地球の営み(=地球ダイナミクス)について、特に水と固体地球の相互作用に注目しながら、温泉や火山の調査、室内分析、データ統計解析、数値シミュレーションなど、さまざまなフィールドや手法を組み合わせて研究している。2017-2018年には、

  • カムチャッカ半島に沈み込んだ海山が、通常の火山帯の位置よりもずっと海溝に近い場所で流体を放出し、予期せぬ場所に特異かつ多様なマグマ活動(これまでに沈み込み帯から報告されている中で最も高い「6300 ppmのニッケル量をもつカンラン石」を含む安山岩活動など)を引き起こしたこと、
  • 46億年のマントル対流の歴史において、水は、表層岩盤を柔らかくすることで、複数のプレートの生成とその相対運動を引き起こすと同時に、沈み込むプレートによって地球内部に効率的に吸い込まれ、現在の表層海洋質量におちついた可能性があること(逆説的に言えば、プレート運動が起こっていたとすれば、地球内部には多量の水が存在すること)、
  • 地表に噴出した溶岩を、「地球マントルの血液検査」にみたて、その微量元素濃度や同位体比の多変量統計解析を行ったところ、地球マントルが大まかには東西半球に2分され、それは数億年~10億年前に主に東半球に存在した「超大陸」に集中して起こった沈み込みと「親水成分」によって形成されたと推定されること、

などを明らかにした。