3.2.6 地震先行現象の研究

(a) 長期的静穏化が地震に先行する傾向の客観的評価

  巨大地震のほとんどに数年以上の静穏化があるという傾向の有意性を客観的に評価するため,北海道大学と協力して,一定の基準に基いて静穏化を判断し,一定の領域に一定の期間,大地震がおきやすいという予測によってランダムに立てた地震より有意に良く当るかを検証してみた.1990-2015年のカムチャッカから小笠原に至る海溝沿いでおきたMw7.5以上の地震9個を対象に検証した結果,半径60kmの領域でM5以上の地震が11.5年間起きなかった場合には,その領域に5.5年間のアラームを出すとしたときに一番成績がよく,対象時空間の14%だけを占めるアラーム量で,対象地震の56%を予知できた.これは,ランダムな予測より4倍よくあたっており,このような結果がまぐれである確率は1%未満であり,チューニングされた結果ではあるが先行傾向は統計的に有意である.

(b) 先行現象と準備過程

  千葉大学・東海大学と協力して,統計地震学から地震の確率予測を研究する研究者と,電磁気等の前兆異常の研究者を集めて,3日間にわたる国際シンポジウムを開催した.また,このシンポジウムでの議論を受けて,先行現象と準備過程の関係について,地震発生シナリオに必然性をもって組込まれた準備過程が仮にないとしても,余震メカニズムを通した地震活動のクラスタリング性等から,意外に高い効率の予測ができるという,非直感的な事実を一般向けに解説した記事を出した.