3.2.3 地震,地殻変動等の最先端観測や新しい観測の試み

(a) 南アフリカ鉱山における半制御地震発生実験

  南アフリカの金鉱山の地下深部の採掘域周辺に多数の高感度微小破壊センサを設置し,半径100m以上の範囲にわたってM-4以下という数cm程度の微小破壊までを検出・位置標定する,世界でも例をみない観測を行ってきた.採掘前線の10m程度前方に形成する,厚味が2-3m,さしわたし20m程度の大規模な板状の微小破壊集団について,採掘前線が到達すると活動を停止し,さらに前方な新たに同様な活動が現れることから,動的な巨視的剪断滑り(鉱山における大地震)の準備過程である可能性を指摘していた.今回,鉱山会社,南アフリカWitwatersrand大学との共同研究によって当該鉱区の岩質,破壊のマッピング,岩石試料の強度試験を行い,この仮説を支持する結果を得た.さらに,剪断応力の高まりは,ほぼ水平な採掘スロットの上下に対称に起きるはずであるのに,観測された微小破壊集団は,採掘スロット下側での最大応力面から期待される方向をもって採掘スロットのはるか上まで延びていることが謎であったが,スロットの上下を構成する岩石の強度が大く違うことに起因するとの結論を得た.鉱床を挾んで上下で岩質が大きく違うのはよくあることで,この知識は採掘の安全性を高めるために有用であると期待される.