3.9.4 原子力発電所建屋の3次元地震応答シミュレーション

原子力発電所建屋の地震応答解析では,地盤-構造物連成,建屋の局所的損傷,機器への振動伝達等,さまざまな要因を計算しなければならない.計算機が未成熟の時代に開発された解析方法は,様々な工夫を考案して,このような要因を計算していた.大容量・高速の大型並列計算機が利用できるようになった今日,従来の解析方法の長所を踏襲しつつ,その短所を補う代替となる解析方法の研究開発が必要となっている.

3次元ソリッド要素を使った地盤-建屋一体の3次元地震応答シミュレーションは,従来方法の補間ないし代替となるよう,共同研究として開発が進められてきた.本年度では,香川大学とともに,time-to-solutionを大幅に短縮する非線形解析のアルゴリズム開発に成功した.実用レベルに達したと評価されている.

コンクリートの他,マルチスプリングモデルと呼ばれる地盤構成則の実装の研究も,従来よりも合理的な定式化に成功し,従来の定式化では負担となっていた非線形計算の負荷を大幅に削減することに成功した.コンクリートと地盤の高度な構成則を有する数値解析手法の需要は高く,防災科学技術研究所・電力中央研究や,民間企業との共同研究と実務利用を進めている.