3.10.7 拠点間連携共同研究

 「地震・火山科学の共同利用・共同研究拠点」である地震研究所と「自然災害に関する総合防災学の共同利用・共同研究拠点」である京都大学防災研究所は,2014年度から地震・火山に関する理学的研究成果を災害軽減に役立てるための研究を推進するために,拠点間連携共同研究を実施している.両研究所の教員及び所外の教員からなる拠点間連携共同研究委員会を設置して,共同研究の基本方針を決定した上で,両研究所の拠点機能を活用し全国連携による共同研究を実施している.これまでに,震源から地震波伝播,地盤による地震動増幅,建物被害など,地震動被害に影響を及ぼす個別の要因を評価した上で,全体としての評価の精度を向上させることを目的として,南海トラフ巨大地震のリスク評価研究などを実施してきた.

南海トラフ周辺の海域下で発生する地震について,DONETの観測記録を用いることによって,海底下地震波速度構造を詳細に決定し,さらには震源の決定精度を上げることが可能となり,巨大地震発生域の検討や地震波伝播特性についても詳しい議論が可能となる.一方で,熊野灘より海溝軸近辺のスロー地震が比較的頻繁に発生す場所では,DONET1と2の間に若干の観測網でカバーできていない領域も存在するため,海底地震計を用いた機動的観測を行うことによって,速度構造や震源決定の精度を向上させることができる.そこで,海洋研究開発機構の観測船「新青丸」を利用し,そのKS-19-18次航海で15台の海底地震計を7観測点に設置した.そのうちの5観測点には海底地震計を1台ずつ設置した.それ以外の2観測点は海溝軸近傍の微動や超低周波地震の発生域にあたり,これらの活動の詳細を把握するために,それぞれの観測点で海底地震計5台を~2 km間隔の十字型に設置して,地震計アレイを構築した.さらに今年度は,気象庁一元化震源カタログからマグニチュード2以上の地震を抽出し,これまでに得られた南海トラフ周辺で得られた速度構造を参照して震源再決定を行うための準備を行なった.また,DONET観測波形を用いた海域から陸域まで通した地震波伝播特性を理解するため,精度を向上した震源情報に基づいた解析を行うための準備を行なった.