3.5.5 地震活動予測実験(CSEP)

 国際共同実験である「地震活動予測実験[Collaboratory for the Study of Earthquake Predictability(CSEP)]」に日本も2009年から参加して,実験検証センターを地震研に設けた.この実験では,事前に厳密な予測のルールを定め,真に将来の地震発生を予測する実験と,その検証を統計的に厳密に行っている.2019年度においては,CSEPの活動に関連して第11回のStatistical Seismology Workshop を箱根において平田教授を大会委員長として実施し,世界中から多くの研究者が集い地震活動予測に関して活発な議論を行った.

 一方,地震発生確率の時間的な変化について調べるために,山陰地方の地殻内地震活動の季節変動性に関する研究を実施した.これは,降雨や灌漑などの地表起源の現象に伴って地震活動度が季節によって変動するという観測事例が近年,世界各地で報告されているためである.山陰地方のM3.0以上の地殻内地震を対象に,時空間ETASモデルを用いて地震のクラスターを取り除くことで地震活動の季節変動性を評価した.その結果,山陰地方の地震活動は春と秋に活発になる傾向があることが示された.さらに,過去に発生した大地震も春と秋に多く発生している特徴がみられることから,長期間にわたって地震活動に季節変動性があることが示唆される.今回明らかになった季節変動は,春は雪解けによる地下浅部の応力変化,秋は降水量の増加による断層強度の弱化によって地震活動が活発になったものと解釈される.今後,様々な地域で同様の検討を行うことで,地震活動の長期的な変動をもたらす原因の理解が深まることが期待される.